官僚・メディアに続いて学界に迫る強権政治。社会には多様性と寛容さが絶対必要だ
2020年10月02日
10月1日、驚きのニュースが飛び込んできた。日本学術会議が推薦した新会員候補105人のうち6人が、菅首相によって拒否されたのだ。
共謀罪など政府の法案に国会で異論を述べた松宮孝明・立命館法科大学院教授、日本の近現代の戦争史を専門とする加藤陽子・東京大学教授らが含まれている。
ここまで手を突っ込んできたのか、という思いがする。
日本はいつから、政権にとって不都合な人間は許さないという度量の狭い社会になったのだろう。これでは香港人を痛めつける中国政府を批判することもできない。
安倍政権時代の2014年、内閣人事局を設けて官僚たちの言動を監視し、意に沿わなければ排除してきた総責任者が今の菅首相である。首相就任の際には、「指示に従わない官僚はクビにする」という趣旨の発言をした。
官僚たちは「モノ言えば唇寒し」である。かつてのように役所内で政策を巡って賛否の議論を戦わすような自由な雰囲気は影を潜めてしまった。官僚主導の弊害はあったが、今では言うべきことも言えず、官僚社会は閉塞感に覆われている。
メディアに対しても、特に影響が大きいテレビの政権批判的な番組内容には、自民党と共にすかさず攻撃を加えてきた。その結果、メディア側では、出演者やコメンテーターの政治的色合いの配分比率に気を遣うという自主規制が横行している。
最近の1か月間、「令和おじさん」というアナウンサーの無邪気な連呼を何度聞かされたことか。国民が自ら国民の首を絞める空気が強まっている。
焦点の日本学術会議は、あまり知られていないが、「日本学術会議法」という法律を根拠としている。
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