木代泰之(きしろ・やすゆき) 経済・科学ジャーナリスト
経済・科学ジャーナリスト。東京大学工学部航空学科卒。NECで技術者として勤務の後、朝日新聞社に入社。主に経済記者として財務省、経済産業省、電力・石油、証券業界などを取材。現在は多様な業種の企業人や研究者らと組織する「イノベーション実践研究会」座長として、技術革新、経営刷新、政策展開について研究提言活動を続けている。著書に「自民党税制調査会」、「500兆円の奢り」(共著)など。
家電リサイクルは進まず、海底資源開発に注目
世界が目指す「脱炭素」。その先に来る「電気エネルギー社会」は、温室効果ガスを減らす半面、多種類の金属を大量消費する社会でもある。クリーンな太陽光発電は、石油・石炭発電に比べて銅や銀、スズ、アルミニウムを数倍も使う。急速に普及する電気自動車(EV)は銅、リチウム・コバルトなどのレアメタルを要求する。
問題は、これら金属資源の供給が将来にわたって持続するかどうかだ。地球の化石燃料の埋蔵量に限界(プラネタリー・バウンダリー)があるように、金属資源にも限界がある。
「電気エネルギー社会」の土台となる金属は銅である。銅は電気をよく通し加工しやすい。下の棒グラフは、銅のこれまでの需要(青)と、その将来予測(橙色)、折れ線グラフは生産量の推移を示している。
銅の需要は1950年代から少しずつ増えてきたが、2020年を境に急激に増えると予想されている。経済はデジタル化し、工場ではロボット化が進み、街中ではEVやハイブリッド車が増えていく。
電子化した車は、車内に張りめぐらす銅線(ワイヤーハーネス)が格段に多い。駆動するモーターは、磁力を生み出すために銅線を巻く。電子基板のパターンもほとんど銅で作られる。
これに対し、生産量の折れ線グラフは、鉱山から掘り出す銅(1次生産)とリサイクル利用(2次生産)の合計だが、20年以降は需要を満たせず、ギャップが広がっていく。
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