新発見の銅鉱床は減り、より低品位に
まず1次生産の銅を見ていこう。
上のグラフは、1970年以降、世界で新発見された銅、金、鉄、ウランなどの鉱床の合計数を示す。このうち銅は約3割を占めるが、2005年以降、急速に減少している。
高品位の銅鉱床はほぼ掘り尽くして低品位のものが増加している。しかも鉱床は不便な高地やへき地に移り、環境汚染の評価基準も厳しくなっている。このため発見コストは3倍に上昇しているという。
東京大学の浦辺徹郎名誉教授は、「1990年以降、世界の銅の1次生産の伸び率は平均年4%で、石油・天然ガス生産量の伸び率(1.1%)の4倍も高かった。この生産が続けば、2030年ごろには1次生産量はピークをうって減少に向かう」と指摘する。
「都市鉱山」、家電のリサイクル率はわずか15%
それなら2次生産(リサイクル利用)を増やせばよいではないか、という見方がある。例えばパソコン1台には平均して銅81.6g、銀0.84g、金0.3gが含まれ、家電製品は「都市鉱山」として期待される。
しかし、小型家電の多くは家庭ゴミとして焼却・埋め立て処分され、リサイクル率はわずか15%(日本)に過ぎない。車のリサイクル率は98%(同)と高いが、手作業に頼るためコストがかかるのがネックだ。
結局、1次、2次生産を合わせても世界の今後の需要増は賄えず、「脱炭素」の前提である「銅の供給拡大」が崩れる懸念がある。「脱炭素」という光の部分だけ議論していると、金属資源の枯渇という陰の部分に気が付かない。