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21世紀は本当にアジア・アフリカの世紀となるのか~コロナで拡大する国際格差

榊原英資 (財)インド経済研究所理事長、エコノミスト

 国際通貨基金(IMF)は10月13日、恒例の「世界経済見通し」(毎年4月と10月に発表)で2020年の世界経済の成長率を上方修正した。上方修正といっても、マイナス4.4%なのだが、6月のマイナス5.2%からは0.8%の増加という事なのだ。

 アメリカはマイナス4.3%に修正(6月時点より3.7%増)、ユーロ圏はマイナス8.3%(1.9%増)、日本はマイナス5.3%(0.5%増)という予測になっている。いずれもかなりのマイナス成長だが、6月時点よりは良くなっている。中国は1.9%のプラス成長と、6月より1.0%成長率が増加している。

 マイナス幅は減少したものの、2008年のリーマン・ショック後の2009年(マイナス0.1%)に比べると、マイナス幅は大きく増大している。それだけではなく、新型コロナウイルスの感染拡大によって巨額の経済損失が重くのしかかり、今後数年間は成長率の鈍化が続くと見ている。

拡大ETAJOE/Shutterstock.com

 IMFによると、2020~21年の経済損失は11兆ドル(約1160兆円)とされ、この額は日本のGDP約500兆円の約2.4倍にもなるという。更に、景気減速による失業や破綻、債務の拡大によって2020~25年の6年間で経済損失は最大28兆ドル(約3000兆円)に達する可能性があるとの試算だ。3000兆円というと日本のGDPの6年分ということになる。

 IMFの見通しは、今年はマイナス成長となるが、来年は財政出動とワクチン普及の効果によってプラス成長となり、成長率はコロナ前の2019年を上回るとしているのだ。

 しかしながら、成長を引っ張っているのは中国(2021年8.2%)であり、日米欧などの先進国は2019年比では、2%低い成長という予測。因みに、アメリカ3.1%、ユーロ圏5.2%、日本2.3%との見通し。


筆者

榊原英資

榊原英資(さかきばら・えいすけ) (財)インド経済研究所理事長、エコノミスト

1941年生まれ。東京大学経済学部卒、1965年に大蔵省に入省。ミシガン大学に留学し、経済学博士号取得。1994年に財政金融研究所所長、1995年に国際金融局長を経て1997年に財務官に就任。1999年に大蔵省退官、慶応義塾大学教授、早稲田大学教授を経て、2010年4月から青山学院大学教授。近著に「フレンチ・パラドックス」(文藝春秋社)、「ドル漂流」「龍馬伝説の虚実」(朝日新聞出版) 「世界同時不況がすでに始まっている!」(アスコム)、「『日本脳』改造講座」(祥伝社)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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