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菅首相に聞かせたいバイデンの言葉~学術会議問題と米大統領選を比べてみた

米TVメディアの批判精神は健在。痛感する日本との落差

木代泰之 経済・科学ジャーナリスト

キャスター、「アメリカの民主主義は崩壊の危機に直面」

 こうした注意喚起の行為はCNNだけかと思ったら、NBCなど大手TVは途中で会見中継を打ち切ったという。

 いくら大統領といえ、ウソの連発は許されない。中継を打ち切るのは一つの見識だが、トランプの話を、ウソを承知でしっかり聞いておこうじゃないかというCNNの対応に軍配を上げたい。いずれにしても、日本のテレビの退屈な政治報道では考えられない17分間だった。

 選挙の勝敗をめぐり、アメリカ社会の緊張感は極限まで高まっている。危ないウソが流布されれば、トランプ支持派が不穏な行動に出ることが予想される局面だった。現にSNS上では、この大統領会見を受けて、バイデン陣営による陰謀論が渦巻いた。

 CNNのキャスターたちは入れ替わり立ち代わり、「アメリカの民主主義は崩壊の危機に直面している」と語り、トランプファミリーからのSNS発信や大統領に肩入れするFOXニュースを遠慮なく皮肉っていた。この自由度は本当にうらやましい。

拡大ホワイトハウス近くで日没後、バイデン氏が当選確実となったことを祝い、「トランプ氏は終わりだ」と叫ぶ人たち=2020年11月7日、ワシントン

政府に代わりメディアが進んで自主規制する構図

 片や日本のTVメディアの、政権との距離感はどうだろうか。どれほどの自由度があるのだろうか。

 日本のTV業界が安倍内閣時代の菅官房長官らによって骨抜きにされたことは、筆者の10月2日の本欄の論考『ついに「日本学術会議」に人事介入 菅首相が進める言論統制』で述べたとおりである。

 一例として、NHKの「クローズアップ現代」で、国谷裕子キャスターから集団的自衛権をめぐって質問された菅氏が怒り、後日、国谷氏の降板につながったとされる事件は記憶に新しい。

 以来、日本のTVの情報番組は政権の意向に気を遣い、一部の番組を除いて政権批判を自粛する傾向が顕著である。政権が暴力的な権力行使をしなくても、メディアが進んで番組内容を自主規制し、国民を順応させていく役目を果たすという、新しい”独裁“の構図ができている。

 米メディアと政権が切り結ぶ距離感。あれはアメリカの話、日本は事情が違う、ですむ話ではないと思う。CNNを見ていると、日本のテレビの大統領選挙報道の分析は、世界を揺るがす関心事であるにも関わらず、正直、質量ともに何ともまどろっこしい。

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筆者

木代泰之

木代泰之(きしろ・やすゆき) 経済・科学ジャーナリスト

経済・科学ジャーナリスト。東京大学工学部航空学科卒。NECで技術者として勤務の後、朝日新聞社に入社。主に経済記者として財務省、経済産業省、電力・石油、証券業界などを取材。現在は多様な業種の企業人や研究者らと組織する「イノベーション実践研究会」座長として、技術革新、経営刷新、政策展開について研究提言活動を続けている。著書に「自民党税制調査会」、「500兆円の奢り」(共著)など。

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