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バイデンにTPP復帰を促せ~RCEPはベストの選択ではない

インドにTPP参加を呼びかけてはどうか

山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

RCEPによる中国のプレゼンスの高まり

 参加国が世界のGDPの3割を占める東アジア地域包括的経済連携(RCEP)が署名された。

 交渉を立ち上げる際、中国がASEAN諸国プラス3(日中韓)を主張し、中国の存在が大きくなると心配した日本がこれにインド、オーストラリア、ニュージーランドを追加したASEAN諸国プラス6を主張し、交渉入りは困難となっていた。

 中国が日本の主張を受け入れてRCEP交渉が開始されたのは、アメリカ主導のTPP交渉に日本が加わろうとしたからだった。中国はアジア太平洋地域の貿易圏から孤立することを恐れたのである。

拡大RCEPに署名する梶山弘志経済産業相(右)と、同席する菅義偉首相(左)=2020年11月15日、官邸、内閣広報室提供

 ところが、歴史の歯車は逆方向に回転した。

 2017年トランプ政権になってアメリカはTPPから離脱した。その前から、民主党の大統領選挙の予備選挙でバーニー・サンダース上院議員が自由貿易反対を唱えて、ミシガン、ペンシルベニアなどラストベルト地域でヒラリー・クリントンを圧倒していた。TPPなどの自由貿易がアメリカの職を奪っているという主張は、ラストベルトの人たちにアピールした。

 TPPはそれまでアメリカの一般国民にはほとんど知られていなかったが、民主党大会ではTPP反対のプラカードが舞った。大統領本選挙では、共和党候補のトランプはサンダースの主張をまねてラストベルトで勝利した。また、既に2016年夏の段階で、有力な共和党議員の反対で、TPP協定の議会承認は困難となっていた。

 インドは、中国に対して関税を削減・撤廃すると中国からの輸入が増大することを恐れてRCEP交渉から脱退した。中国が補助金を企業に与えることで輸出を増やしていると主張している。

 バイデンが副大統領だったオバマ政権はリバランス(重心を変える)と称してアジア太平洋地域重視を打ち出していたのに、通商面ではアメリカもインドも自由貿易協定から離脱して、この地域で中国のプレゼンスが高まることになった。

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筆者

山下一仁

山下一仁(やました・かずひと) キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

1955年岡山県笠岡市生まれ。77年東京大学法学部卒業、農林省入省。82年ミシガン大学にて応用経済学修士、行政学修士。2005年東京大学農学博士。農林水産省ガット室長、欧州連合日本政府代表部参事官、農林水産省地域振興課長、農村振興局整備部長、農村振興局次長などを歴任。08年農林水産省退職。同年経済産業研究所上席研究員。10年キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。20年東京大学公共政策大学院客員教授。「いま蘇る柳田國男の農政改革」「フードセキュリティ」「農協の大罪」「農業ビッグバンの経済学」「企業の知恵が農業革新に挑む」「亡国農政の終焉」など著書多数。

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