コロナで「豊かなゼロ成長の時代」が到来した
2020年11月20日
コロナウイルス感染の拡大で2020年世界経済はマイナス成長に転じた。感染の拡大は成長率を大きく下げただけではなく、人々の日常生活にも甚大な影響を及ぼしている。EUは域内移動の自由を諦め、各国が国境を閉鎖する事態にまで追い込まれている。
現在、国境移動は段階的に再開されつつあるものの、日本を含むごく一部の国に対して観光を認めている国があるという状況。まだまだ情勢が流動的すぎて、かつての自由なヨーロッパ旅行には程遠い情勢のようだ。
また、アメリカでは感染が止まる所を知らないという状態。欧米への海外旅行を大きく減少させ、旅行はベトナムなどアジアの国々が中心になってきている。「安く、近く、短い」旅行へのシフトが起きている。
一方で、コロナウイルス感染の拡大で必然的結果として、健康への関心が世界的に高まってきている。
2020年4月1日に施行された健康推進法の改正によって「多数のものが利用する全ての施設」について受動喫煙防止法が課されるようになった。日本の喫煙率は2001年には男性で48.4%、女性で14.0%だったが、2019年には男性で28.8%、女性で8.8%まで下がってきている。事実、レストラン等の施設で禁煙を要求しているところが多くなり、喫煙者にとっては肩身の狭い状況になってきていると言えるのだろう。
また、公衆衛生面で新型コロナウイルス感染拡大を防ぐために推奨されているマスク着用は定着しつつあり、今や電車等の公共機関ではマスクをすることが常識になってきている。電車内でマスクをしていないと周囲から白い目で見られる程だ。世界中で、これほど多くの人がマスクをしているのは日本以外にないのではないだろうか。
適度な運動といえば、朝、ランニングや犬の散歩をする人たちが増えてきている。筆者も毎朝、7時半から8時まで30分ランニングをしているが、この所、かなり仲間が増えてきているように思える。
週に3回ほど通っているスポーツジムも、利用者が増えてきているようだ。大型のスポーツジムでテニスやラケットボール、ゴルフの練習、水泳などが出来るのだが、プールでは子供向けのスイミングレッスンが開かれており、中々盛況で、二階から母親たちが心配そうに(というよりは嬉しそうに)見ているのが、プールで泳いでいると、よく見えるのだ。それを見込んでいるのか、各所でスポーツジムが新たに作られてきている。
新型コロナウイルスの感染で累積感染者数・累積死者数はアメリカが最も多い(累積感染者数1040万人・累積死者数24万人)が、日本は両者ともアメリカに比べ極めて少ない(累積感染者数11万人・累積死者数1847人)。このところ若干増加傾向にあるものの、主要国の中では最も低くなっている。日本人の手洗い、うがい等の習慣、その清潔好きがプラスに働いているのだろう。
コロナウイルス感染の拡大は、前述したように、人々の移動を少なくし、その生活パターンを少しずつ変えつつある。今まで、「より速く」「より遠くへ」という事で、グローバリゼーションが進展してきたのだが、今や、「より近く」「よりゆっくり」、そして「より寛容に」が世界の新しいモードになりつつあると言えるのだろう。
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