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コロナ感染抑止はGo To政策の停止から

継続にこだわれば、危機意識を鈍らせ国民に間違ったメッセージを送り続けることに

小此木潔 上智大学教授(政策ジャーナリズム論)、元朝日新聞論説委員

 一日当たりの感染者が2000人を突破した。もはや新型コロナウイルス感染症の拡大要因は、政府のGo To政策の継続にあると考えるべきではないか。

 日本医師会の中川俊男会長も、Go To政策が感染拡大の「きっかけになったことは間違いない」としている。Go Toトラベルやイートなどの推進それ自体が人と人との接触を拡大するものであり、ウイルス感染の機会を増やしていることに政府は正面から向き合うべきである。感染者が増えているのになおもこの政策の継続にこだわれば、危機意識を鈍らせ、国民に間違ったメッセージを送り続けることになる。菅義偉首相は、感染拡大を防ぐため全力で取り組むよう閣僚らに指示したというが、それならGo To政策の停止から始めるべきではないのか。

反応が鈍い菅政権

拡大記者会見する日本医師会の中川俊男会長=2020年11月18日、東京都文京区

 中川会長は11月18日の記者会見で、Go Toトラベルと感染との関係について、「Go Toトラベル自体から感染者が急増したというエビデンスがなかなかはっきりしないが、(感染急増の)きっかけになったということは間違いないと思う。感染者が増えた状況のタイミングなどを考えると間違いなく関与は十分しているだろう」と述べた。この日のテレビニュースでは、「手洗いやうがいでは限界があるのか」(市民)、「政府が(Go Toを)やめると言わない限り、旅行案内は続けるしかない」(旅行業者)、「このままではますます感染が拡大してしまう危険が大きい」(感染症の専門家)といった不安の声が噴き出した。

 ところが、政府の動きは鈍い。18日に西村康稔経済再生相と田村憲久厚労相から感染状況について報告を受けた菅首相は、感染拡大防止に全力で取り組むよう指示したというが、その中身は感染リスクがあるところでの検査徹底などについて都道府県と連携して進めるようにということだとNHKニュース7は報じた。

 少なくともGo Toキャンペーンの停止や大幅縮小の検討くらいは言うべきところなのに、加藤勝信官房長官が会見でGo Toトラベル事業見直しについての質問に対して答えた内容は「旅行先のホテルや旅館などで当事業の参加者に起因して感染が広がったという報告は受けていない」「除外してほしいといった要望も受けていない」「東京都とも連携し感染拡大防止を徹底しつつ適切な事業の推進を図っていきたい」というものだった。

 経済再生相は立場上、経済優先に傾きがちだとしても、せめて田村厚労相や加藤官房長官は菅首相に「このままではいけません」と迫り、首相からGo To見直しへの言質を引き出すくらいはできなかったものだろうか。

 いうまでもなく、感染拡大で国民の支持を失えば、国政選挙にも重大な影響が出るだろう。トランプ米大統領が再選されなかったのも、トランプ氏の説明とは裏腹に感染被害が拡大し続けたことが大きな要因だった。決して対岸の火事などではないことに政権や与党幹部は思い至らないのだろうか。

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筆者

小此木潔

小此木潔(おこのぎ・きよし) 上智大学教授(政策ジャーナリズム論)、元朝日新聞論説委員

上智大学教授。群馬県生まれ。1975年朝日新聞入社。富山、奈良、大阪、ニューヨーク、静岡、東京で記者をしてきた。近年は日本の経済政策や世界金融危機など取材。2009年5月から東京本社論説委員室勤務、11年4月からは編集委員も務め、14年4月から現職。著書に「財政構造改革」「消費税をどうするか」(いずれも岩波新書)、「デフレ論争のABC」(岩波ブックレット)。

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