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中国のTPP参加のハードルを上げよ!~米国の政治空白を突いた習近平

山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

米国不在のTPPへ参加を目指す中国の意図

 私は、中国がアメリカ不在のTPPに参加する動きをみせていることに警鐘を鳴らしてきた。長くなるが、『WTOは機能不全、TPPに米中を引き込め』(論座2020年6月25日)から引用しよう。

 アメリカがTPPから離れているうちに、逆に、中国がTPPに関心を持つようになっている。最近、李首相のTPP参加に向けた積極的な発言が注目されているが、かなり前から、中国政府によるTPP加盟国への働きかけが行われているようだ。
 中国としては、アメリカへの対抗意識もある。ASEANに日中韓やインド、オーストラリア、ニュージーランドを加えたRCEP交渉で、離脱を示唆しているインドを除いても、中国が妥結を急いでいるのは、このためだ。保護貿易主義をとるアメリカに対し、中国こそが自由貿易を推進しているのだと世界にアピールしたいという意図もあるだろう。中国の中には、TPP参加によって国有企業改革を進めたいとする人たちもいる。外圧を国内改革に利用したいというのだ。
 しかし、今中国がアメリカ不在のTPPに参加する場合には、投資や国有企業などのルールについて大幅な適用除外が中国から要求されるだろう。すでに、ベトナムなどには多くの例外を認めている。これが認められる場合には、中国にはTPPの規律はほとんど課されなくなり、オバマ政権が考えたことと逆の事態になってしまうおそれがある。

 アメリカの政治的空白を突いて、中国はアジア太平洋地域でのプレゼンスを積極的に増大させている。南沙諸島での人工島の建設など、中国は南シナ海で実効支配を強めている。中国軍の戦闘機は、台湾南西部の防空識別圏に侵入を繰り返している。尖閣諸島の沖合でも、中国海警局の船が、日本の領海や接続水域を頻繁に航行している。

 RCEPに続くTPPへの参加表明は、軍事面だけでなく、通商経済面でも中国のプレゼンスを高めようとする意図の表れだろう。

拡大北京の人民大会堂で開かれた歓迎式典で、閲兵をするバイデン米副大統領(当時)と中国の習近平国家副主席=2011年8月18日

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筆者

山下一仁

山下一仁(やました・かずひと) キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

1955年岡山県笠岡市生まれ。77年東京大学法学部卒業、農林省入省。82年ミシガン大学にて応用経済学修士、行政学修士。2005年東京大学農学博士。農林水産省ガット室長、欧州連合日本政府代表部参事官、農林水産省地域振興課長、農村振興局整備部長、農村振興局次長などを歴任。08年農林水産省退職。同年経済産業研究所上席研究員。10年キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。20年東京大学公共政策大学院客員教授。「いま蘇る柳田國男の農政改革」「フードセキュリティ」「農協の大罪」「農業ビッグバンの経済学」「企業の知恵が農業革新に挑む」「亡国農政の終焉」など著書多数。

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