メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

携帯通話料値下げ問題を「日本の仕組み」から考える

根底にある規制の構造と、その課題

茂垣 昌宏 慶応義塾大学大学院法学研究科研究員・ 産業研究所共同研究員

2 携帯通話料は高いのか――「金持ち用」携帯しかない日本

 携帯電話は、固定通信のブロードバンドと並んで重要な通信サービスだが、その料金は規制されておらず、他の物品サービスと同じように価格は自由に設定される。日本の携帯電話料金は大変複雑で、妥当なものかどうか素人には分かりづらい。料金比較は、立場によって差があるが、批判を受けることを前提に精査されて発表されたと思われる総務省の内外価格差調査においてはだいたい欧州の2倍程度、ニューヨークとソウルが東京より高いという結果が出ている。この20年の日本におけるデフレと物価下落の影響、家計の平均収入の低迷と諸外国の着実な経済と家計収入の向上を考えれば、携帯通話料が目立って高いことは事実だろう(図表)。

携帯通話料の推移(MNO)(総務省「電気通信サービスに係る内外価格差調査-令和元年度調査結果(概要)-」(2020年6月)に基づく)拡大携帯通話料の推移(MNO)(総務省「電気通信サービスに係る内外価格差調査-令和元年度調査結果(概要)-」(2020年6月)に基づく)

携帯通話料の推移(MVNO)(総務省「電気通信サービスに係る内外価格差調査-令和元年度調査結果(概要)-」(2020年6月)に基づく)拡大携帯通話料の推移(MVNO)(総務省「電気通信サービスに係る内外価格差調査-令和元年度調査結果(概要)-」(2020年6月)に基づく)

 これに対し、業界関係メディアのライターなどは、日本の現在の携帯電話サービスの品質の高さを絶賛して高いことの理由として挙げている。しかし、この業界にはかつて要らない高機能を大量に搭載した高機能携帯電話端末(ガラパゴス携帯:ガラケー)を世界中に売り込んで国際競争に完全に失敗し、自滅した過去がある。

 筆者は英国に数年間滞在したことがあるが、その経験から出た実感を言えば、英国と比べた場合、日本には「金持ち用」の携帯電話しかないが、英国には「金持ち用」と「貧乏人用」の携帯電話があるというものである。

 確かに、年収が安定し携帯通話料など気にする必要が無く、ほどほど若くて元気があり細かい事もでき、電話機などについてもある程度の知識もあるという人であれば、日本のようにある程度の金額を払ってでも最新の携帯サービスを受けられる方が良いという考え方は可能である。また、携帯が全国どこでも、例えばハイキング先の山などでも自由に使えて、そこで撮った写真を直ちにSNSでアップロードして友人とシェアするなど出来れば、生活もより豊かで快適であろう。

 しかし他方で、世の中には、収入が安定せず毎月の支出を如何に切り詰められるか常に考えている人、高齢や障害などで体力もそれほど無く細かいことがなかなかできない人、電話機など複雑でとても分からないという人もいる。こういう人にとっては、それほど高度なことが出来なくても良いから、スーパーに行くなど日々の生活や家族との会話、ちょっとした友人との会話などで使えれば十分という人もいる。

 日本の携帯電話は、前者の人には良いサービスを提供しており、そのサービスは英国よりも良いかもしれない。しかし、後者の人に対するサービスは、劣悪であり、高齢者の多くなど知識のあまり無い人達に対しては、搾取という言葉を使いたくなるようなサービスを提供している場合がある。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

茂垣 昌宏

茂垣 昌宏(もがき・まさひろ) 慶応義塾大学大学院法学研究科研究員・ 産業研究所共同研究員

1972年、東京都生まれ。博士(政治学・英国シェフィールド大学)。郵政省、外務省、総務省、内閣官房などの勤務を経て、慶應義塾大学大学院法学研究科研究員(ガバナンス、公共政策、行政学)・ 産業研究所共同研究員。著書に Understanding governance in contemporary Japan: Transformation and the regulatory state(英国マンチェスター大学出版局)など。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです