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バイデン登場で「株主第一」が変わる

ケタ外れの格差生んだ主因。日本伝統の「三方よし」に先見性

木代泰之 経済・科学ジャーナリスト

ケタ外れの格差、富裕層の上位1%が32%の富を握る

 CEOたちは自分の報酬を引き下げるとは言っておらず、額面通りには受け取れない。しかし、声明の背後に「このまま格差が広がると、アメリカ社会は分断を超えて崩壊する」という経済界の危機感があることは確かだ。

 FRB(米連邦準備理事会)の2018年調査では、富裕な上位10%の人々が全米家計資産の70%を握り、更に上位1%の人々だけで32%を握る。下位50%の人々は合計しても1%にすぎない。

拡大ymgerman/Shutterstock.com

 声明当時、民主党内では、大統領選挙に向けて反企業色が濃いバーニー・サンダース氏やエリザベス・ウォーレン氏が躍進しており、経済界は国民の間に高まる企業批判をかわす必要があった。

 また1980年代以降に生まれたミレニアル世代の6割は「会社の主要な目的は利益追求より社会貢献だ」という考えを持っているとされる。企業がいい人材や投資マネーを集めるには、影響力を無視できなくなっている。

ROEを高め、株主利益の増大させてきた経営者

 では、株主第一主義にはどのような弊害があるのだろうか。

 株主第一主義で重視される経営指標はROE(株主資本利益率)である。株主が投資したお金(分母)に対する当期利益(分子)の割合を示している。当期利益は配当可能なので、ROEが高いほど株主への配当を増やし、株価を高くできる。

 ROEを高くするテクニックはビジネススクールで教えてくれる。人件費の抑制、従業員のリストラ、研究開発費の抑制などで、1980年代以降、米国では経営者がROEの数字を競い合ってきた。

 また余剰資金を原資にして自社株買いをし、株主への利益配分を増やすことも盛んになった。その分、資金が研究開発や設備投資、従業員の待遇改善に回らなくなり、長期的な成長を損なう恐れがある。

「CEOゴロ」まで登場する株主第一主義の弊害

 株主第一主義を批判し「公益資本主義」を唱えるベンチャー投資家・原丈人氏は、著書「増補21世紀 国富論」の中で、企業を渡り歩く「CEOゴロ」の生態を紹介している。

 彼らは業績の悪い企業に目を付けると、「再建」を売り込んでCEO に就任する。先のような手法でROE を高くし、株価が上がると、自らストックオプションを行使して巨利を手にする。そして次の企業に移っていく。

 弱肉強食の犠牲になるのは、いつも労働者である。株主利益が優先される結果、富裕層はより豊かになるが、労働者の賃金は上がらない。

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筆者

木代泰之

木代泰之(きしろ・やすゆき) 経済・科学ジャーナリスト

経済・科学ジャーナリスト。東京大学工学部航空学科卒。NECで技術者として勤務の後、朝日新聞社に入社。主に経済記者として財務省、経済産業省、電力・石油、証券業界などを取材。現在は多様な業種の企業人や研究者らと組織する「イノベーション実践研究会」座長として、技術革新、経営刷新、政策展開について研究提言活動を続けている。著書に「自民党税制調査会」、「500兆円の奢り」(共著)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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