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2021年の景気回復は極めて困難~コロナは好景気を襲った「スペイン風邪」と酷似している

楽観的過ぎるIMF予測

榊原英資 (財)インド経済研究所理事長、エコノミスト

 2020年の世界のGDPはマイナス4.4%と大きく下落するものの、新型コロナウイルス感染は次第に収束し、2021年には5.2%の成長率を達成し、2020年の落ち込みを上回るとIMFは予測している。ただ回復はするものの、2020年の落ち込みを完全にカバーするには至らず、大幅なGDPギャップが存在し続け、失業率も高水準に留まるとの予測だ。

 問題は新型コロナウイルス感染がどこまで続き、いつ収束するかという事なのだが、しばしば、この感染症は、1918年、第一次世界大戦中に始まったスペイン風邪と比較される。スペイン風邪の患者数は世界人口の25~30%(WHO)、あるいは世界人口(18億~19億)の1/3が感染し、致死率は2.5%以上だったとされている。

拡大corlaffra/Shutterstock.com

 スペイン風邪が流行ったころの経済は、世界的にはバブル経済といわれ好調だった。アメリカが好景気を謳歌するなど、現在の状況と多少似ていた。スペイン風邪が流行した直後には不景気にならなかったのだが、スペイン風邪には1回目と2回目があり、世界的な不況に突入したのは2回目の流行(1919年)後だった。

 1919年には株価が暴落し、その後10年続く世界的な不況に突入していく。周知のように、この長期的不況は1930年代の世界大恐慌に繋がっていったのだった。

 そして、スペイン風邪は発生した時期と、新型コロナウイする感染が発生した今の状況とはかなり共通点が見られるのだ。共通点の一つはそれが好景気の時期に発生したという事。スペイン風邪の発生はバブル経済を背景としていたが、今回もアメリカ経済は好調で、中国経済も高成長を続けていた。そして、長く続いた好景気の中で、そろそろ終わりかと投資家たちが考えていたころに発生している。


筆者

榊原英資

榊原英資(さかきばら・えいすけ) (財)インド経済研究所理事長、エコノミスト

1941年生まれ。東京大学経済学部卒、1965年に大蔵省に入省。ミシガン大学に留学し、経済学博士号取得。1994年に財政金融研究所所長、1995年に国際金融局長を経て1997年に財務官に就任。1999年に大蔵省退官、慶応義塾大学教授、早稲田大学教授を経て、2010年4月から青山学院大学教授。近著に「フレンチ・パラドックス」(文藝春秋社)、「ドル漂流」「龍馬伝説の虚実」(朝日新聞出版) 「世界同時不況がすでに始まっている!」(アスコム)、「『日本脳』改造講座」(祥伝社)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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