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国民・政府・民間をつなぐ「マイナポータル」でフリーランスのセーフティーネットを

デジタル・ガバメントのカギを握るマイナポータルの活用

森信茂樹 東京財団政策研究所研究主幹

 デジタル・ガバメント、デジタル庁の創設など、菅政権の下でデジタル社会への対応が進みつつある。重要なのは、行政のデジタル化は「手段」であり、便利な手段を活用してどのような「政策」を構築するかということである。この原点を忘れてはならない。

コロナ対策で使われなかったマイナンバー

 マイナンバー制度が大きく変わろうとしている。きっかけは新型コロナ問題で、国民全員に配る特別定額給付金の支給遅延をきっかけに、マイナンバーの問題点があぶりだされたことだ。

 デジタル・ガバメントを標榜しマイナンバー制度の導入などを進めてきたわが国だが、その内実は、ばらばらの設計や縦割りの組織などで、緊急時には役に立たないことが国民の目にも判明した。

 急遽6月に菅官房長官の下「マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤抜本改善ワーキンググループ」(以下、ワーキング)が立ち上がり、筆者もメンバーとして参加した。月一回程度の議論を経て、2020年12月11日に「報告書」と新たな「工程表」を了解し、21日の閣僚会議で正式決定された(こちら参照)。

 なぜコロナ禍でマイナンバーが使われなかったのか。その理由は、マイナンバーを活用できる範囲が「税」「社会保障」「災害」の3分野に限定されており、予算措置だけで対応されたコロナ給付金(特別定額給付金)はその範疇に入らなかった(利用事務に該当しなかった)ということである。

 3分野に限定されたのは、国民のプライバシーへの懸念などで活用範囲をしぼらざるを得なかったからだ。給付金については、今後法律改正を経て活用できるようにするようだが、活用範囲は限定するという政府の方針は変わらない。

拡大特別定額給付金の申請書の発送作業をする市職員たち。職員同士が対面にならないよう配置されていた=2020年5月7日、岐阜県中津川市

 もう一つ、カードによるオンライン申請がなぜ機能しなかったのだろうか。これは申請と住民基本台帳との突合に手間がかかったため、と説明されている。

 また本人の受取口座の確認に手間取ったこともあげられる。申請に記載された口座の実在確認ができず、誤入力の場合には個別連絡となった。住民基本台帳は漢字、銀行の振込先名義はカタカナなので、機械的な突合は難しいという事情もあった。

 ワーキングでは、デジタル・ガバメントの構築に向けて様々な課題を総ざらいし、問題点の指摘や今後の課題などを「報告書」にまとめ、「工程表」も新たに作成した。それに基づき来年以降必要な法律改正を行うこととなった。

 以下、ワーキングで筆者が主に担当した「マイナポータル」に的を絞って書いてみたい。


筆者

森信茂樹

森信茂樹(もりのぶ・しげき) 東京財団政策研究所研究主幹

1950年生まれ、法学博士(租税法)。京都大学法学部を卒業後、大蔵省入省。1998年主税局総務課長、1999年大阪大学法学研究科教授、2003年東京税関長、2004年プリンストン大学で教鞭をとり、2005年財務総合政策研究所長、2006年財務省退官。この間東京大学法学政治学研究科客員教授、コロンビアロースクール客員研究員。06年から18年まで中央大学法科大学院教授、(一社)ジャパン・タックス・インスティチュート(japantax.jp)所長。10年から12年まで政府税制調査会特別委員。日本ペンクラブ会員。著書に、『デジタル経済と税』(日本経済新聞出版)『税で日本はよみがえる』(日本経済新聞出版)、『未来を拓くマイナンバー』(中央経済社)『消費税、常識のウソ』(朝日新書)『日本の税制 何が問題か』(岩波書店)、『抜本的税制改革と消費税』(大蔵財務協会)、『給付つき税額控除』(共著、中央経済社)『どうなる?どうする!共通番号』(共著、日本経済新聞出版社)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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