米株式市場ではじけた「大衆の反乱」~コロナ禍で急拡大する貧富の格差
ウォール街のプロに対抗する個人投資家たち、武器はSNSでの団結
木代泰之 経済・科学ジャーナリスト
ナチスの迫害逃れてポーランドから米国へ
第二次大戦前後、ナチスの迫害を受けた多くのユダヤ人が米国に移住した。ポーランドに生まれ、今ロサンゼルスの高級住宅地に住むS氏(99歳)もその一人だ。戦後、弁護士のかたわら不動産投資ファンドを運営し、今では500億円を超す資産がある。
S氏が15歳のとき、ドイツ軍がポーランドに侵攻した。洋服の仕立て職人だった父親は妻子を連れてポーランドを脱出。際どいところで収容所送りを免れたが、脱出の機会を逸した親戚はほとんど殺されたという。
S氏は新聞配達をしながらシカゴ大学法学部に進んだ。冬は寒冷で知られるシカゴ。配達を終えると、吐く息で顔が真っ白になった。苦学の末に弁護士になり、住居を気候温暖なロサンゼルスに移した。
友人たちから集めた資金で不動産ファンドの運営を始めた。主な投資対象はショッピングセンターだ。経営が傾いたショッピングセンターを買い取り、資金を投じて魅力的な店舗に改装。数年して客足が戻ると、高値で売って利潤を手にした。
S氏は「物件を一目見るだけで、どこをどうすれば儲かるかがピンとくる」という。
富裕層と知られたくない警戒心が働く
高齢のS氏は今もファンド経営を続けている。印象に残るのは、自らが富裕層であることから来る社会への警戒心の強さである。
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