小此木潔(おこのぎ・きよし) ジャーナリスト、元上智大学教授
群馬県生まれ。1975年朝日新聞入社。経済部員、ニューヨーク支局員などを経て、論説委員、編集委員を務めた。2014~22年3月、上智大学教授(政策ジャーナリズム論)。著書に『財政構造改革』『消費税をどうするか』(いずれも岩波新書)、『デフレ論争のABC』(岩波ブックレット)など。監訳書に『危機と決断―バーナンキ回顧録』(角川書店)。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
消費税だけではない「ポストコロナ」の新たな税制
しかしバイデン政権の積極策は、危うさをはらむ。バブルが制御不能なまでに膨らみ続け、その崩壊で米国はもとより世界経済が大打撃を受けることになりかねない。へたをすれば、それで世界デフレの引き金を引いてしまうかもしれない。そのあげく、世界はまた大規模な金融財政政策によって不況対策を繰り返すのだろうか。それも悪夢だ。
先行きは予測しがたいが、最悪の事態も念頭に置きながら、世界的なバブル崩壊への備えについて議論を進めるべきではないか。
バブル崩壊といえば、日本の場合、その結末は1990年代以降の長期デフレであった。その過程で金融機関の不良債権処理や不況対策のために公的資金がつぎ込まれ、政策のツケは財政赤字となって跳ね返り、のちの消費税引き上げへとつながっていった。バブルはたいがいのところ、金融市場の行き過ぎが原因で膨らみ、崩壊で生じる不況や「大きすぎてつぶせない」金融機関の救済などは庶民の税金でまかなわれる。
このままいけば、今回も似たような展開になるのではないかと心配だ。コロナ不況対策で空前の財政出動が行われ、その後に来るバブル崩壊でさらに財政と金融は傷んでゆくとすれば、その帳尻合わせにまたしても消費増税を、という主張が経済界や財務官僚、保守政党から出てくる可能性は大きいのではないか。だがそうやって消費税頼みを繰り返していては、結局のところ「福祉財源としての消費税」という建前はますます色あせる。さらに深刻なのは、消費がまた落ち込み、消費税の逆進性で格差が拡大してしまうことである。
そうなれば日本経済の成長が
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