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「キッズライン問題」とジャーナリズムの役割②

SNSでの告発が報道につながる

中野円佳 フリージャーナリスト

「キッズライン問題」とジャーナリズムの役割①

 2020年5月29日。4月末にキッズラインの登録シッターの中から預かり中の子どもへのわいせつ容疑で逮捕者が出たことについて、私はTV番組モーニングクロスに3つの問題提起をした。

 1つ目は小児性犯罪は再犯率が高いため、子どもに関わる分野で働く人に対して国として犯罪歴チェックをできるようにしたほうがいいということ。2つ目はそれでも初犯は防げないため、できる限り事業者として審査のハードルを上げるべきであるということ。それから最後に、事業者は最低限、利用者へのリスク周知をする義務があるのではということ。

 キッズラインには事前に出演することを連絡し、質問を入れていた。経沢香保子社長の出演等はなかったが、MCの堀潤さんが経沢社長から連絡があったと説明し、「ベビーシッターは行政に届出をしていて、行政のほうで大丈夫と言った人を受け入れているので、本来であれば行政側の方で犯罪歴データベースと照らし合わせて、通してはいけないとはねてほしい。そういう働きかけもこれからしていく」というコメントに言及した。

 4月に逮捕された容疑者は、キッズライン登録時は逮捕歴がなかったことから、経沢社長の言うデータベースがあったとしても防げていない。また、後にこの「行政に届出」すら確認していなかったことが判明し、今年1月にキッズラインは行政処分を受けることになる。

 つまりこのコメント自体が突っ込みどころ満載であったが、この時点では、私も国としての犯罪歴データベース等を進めることには賛成だったし、キッズラインが利用者への周知などのできることをしてくれればと思っていた。

キッズラインのホームページにある2020年5月27日付「安全性向上のための取り組みについて(2019年11月〜2020年5月現在)」から拡大キッズラインのホームページにある2020年5月27日付「安全性向上のための取り組みについて(2019年11月〜2020年5月現在)」から

 放映の後、反響は大きく、私のもとに様々なメッセージやツイートが送られてきたが、その中で、私のTwitterアカウントのもとに1つのダイレクトメッセージ(DM)が届いた。この人をAさんとしよう。

1本のダイレクトメッセージ

 Aさんは、「テレビは見逃してしまったのですが、キッズラインの経沢社長は何かコメントをしたのでしょうか」と私に送ってきた。

キッズライン社長の経沢香保子さん=2018年2月15日、東京都港区六本木拡大キッズライン社長の経沢香保子さん=2018年2月15日、東京都港区六本木

 これがAさんにとっても私にとっても大きな転機となった。ツイッターで送られてくるDMには様々なものがあり、全て読んで返信できるわけではないのだが、Aさんのメッセージには私は即座に返事をした。

 驚くべきことにAさんは、つい最近、自身の長女もキッズラインを通じて、4月に逮捕された人物とは別のシッターによって性被害に遭っていたというのだ。まず被害に遭ったお子さんの今の状況が落ち着いているのかどうか、Aさん家族が安全な状態なのかを確認しながらやりとりをしていった。

 AさんからのDMを見つめながら私は自分の目を疑っていた。論理的に考えてキッズライン社が今すべきは利用者へのリスク周知だろう、と思いTwitterやテレビで訴えてきたが、まさか本当にリスク周知をしなかったために新たな事件がここ数週間で起こっているとは

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筆者

中野円佳

中野円佳(なかの・まどか) フリージャーナリスト

東京大学教育学部卒業後、日本経済新聞社。2014年立命館大学大学院先端総合学術研究科修士号。2015年よりフリージャーナリスト、東京大学大学院教育学研究科博士課程。過去に厚労省「働き方の未来2035懇談会」、経産省「競争戦略としてのダイバーシティ経営の在り方に関する検討会」委員。2017年よりシンガポール在住。著書に『「育休世代」のジレンマ』『なぜ共働きも専業もしんどいの』など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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