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「キッズライン問題」とジャーナリズムの役割⑥

偽装レビューの調査報道

中野円佳 フリージャーナリスト

「キッズライン問題」とジャーナリズムの役割①

「キッズライン問題」とジャーナリズムの役割②

「キッズライン問題」とジャーナリズムの役割③

「キッズライン問題」とジャーナリズムの役割④

「キッズライン問題」とジャーナリズムの役割⑤

 ある利用者から、似たような質の低い「初回レビュー」が大量にあると連絡を受けたのは選考プロセスの記事を公開した直後だった。しかし、こちらも組織で動いているわけではなく、割ける時間も限られていた。告発してきてくれた利用者に御礼を述べて、しばらくそのメッセージを後回しにしていた。

 しかし、キッズラインの改善策も出てきて一段落したかなと思ってから、そのメッセージを読み返すと、その重要性がじわじわと迫ってきた。「初回レビュー」というのは、一番初めにシッターが働き始めたときの働きぶりを、初回のユーザーが評価するもので、キッズラインの場合はこれをママトレーナーと呼ばれる利用者が「実地研修」として担っていた。

 その内容がコピペだったら? いや、でも似たようなシッティング内容で、コピペくらいするかもしれない。そう思いなおして、初回レビューを見直すと、ただコピペであることが問題なのではなく、実際に実地研修をしたのかどうかが怪しいものがあることが分かってきた。

キッズラインのホームページから拡大キッズラインのホームページから(顔などの部分をモザイク処理しています)

キッズラインのホームページから拡大キッズラインのホームページから(顔などの部分をモザイク処理しています)

 たとえば、上の二つの写真では、同じ人物が6月16日にレビューを書いていること。そして「近い地域のサポーター」(シッター)の住所から、東京都港区、福岡県福岡市近辺で書かれていることがわかる。

「コピペ」のようなレビューを書いたのは

 登録シッターの情報はある程度まで、キッズラインのサイトで一般向けに公開されており、利用者ではなくても、閲覧することができる。協力者を得てこのすべてのデータを分析した。そうすると、1人の利用者が、たとえば1~3日のうちに、東北から九州で活動する複数シッターのレビューを10件以上書いているような事例が複数例あることが分かった。

 どのシッターも自分の子どもと一緒に遊んでくれたかのように書かれているのだが、並べてみればほとんど同じ内容で、実際に子どもと触れ合ったかどうかは極めて疑わしかった。

 本当にこの人物はシッティングを実施していたのか。確かめるのは簡単だ。シッターに聞けばいいのだ。選考プロセスの取材をしていた際に、実際にレビューをしている側のママトレーナー、レビューを受ける側であるシッターに話を聞いていた。

 多くはきちんと実地研修をして、実際に実施した内容のレビューをママトレーナーに書いてもらったという証言が得られたが、コロナ禍に入ってからの登録者などで、実地研修はなく、オンラインで実施したグループ面接があったという証言をしてくれる人が複数いた。

 いずれも、実際には子供に接していないにもかかわらず、初回レビューはあたかも初回利用者が子供を預かってもらったかのように書かれていたとの証言を得られた。そして、実際に疑惑のあるレビューを大量生産している人物に初回レビューを書いてもらったというシッターを見つけることができた。

 そのシッターが参加したグループ面接をしていた人物は、過去に社員

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筆者

中野円佳

中野円佳(なかの・まどか) フリージャーナリスト

東京大学教育学部卒業後、日本経済新聞社。2014年立命館大学大学院先端総合学術研究科修士号。2015年よりフリージャーナリスト、東京大学大学院教育学研究科博士課程。過去に厚労省「働き方の未来2035懇談会」、経産省「競争戦略としてのダイバーシティ経営の在り方に関する検討会」委員。2017年よりシンガポール在住。著書に『「育休世代」のジレンマ』『なぜ共働きも専業もしんどいの』など。

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