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コロナ感染社員を有給の特別休暇に〜長府工産、社員の幸せを創る奇跡の経営(1)

コロナ禍で士気上がる中小企業の経営の秘密

神山典士 ノンフィクション作家

2020年2月の段階で、先手先手のコロナ対策

 一方感染者を出した横浜支店内の対応も素早かった。12月9日昼にはパートを含む社員全員へのPCR検査が必要となったが、総務主幹者を通して社員の一人が、医療現場で働く妻に連絡。彼女が所属病院の承諾を得て、その日の夕方には全員分の検査キットを持って防護服着用で横浜支店に来た。その場で全員の検査を済ませ、翌10日の昼には他の社員は「全員陰性」という結果が出た。

 さらに社内清浄に関しても予め探しておいた消毒業者に感染判明2日後の10日に連絡。13日日曜日に作業が入り14日月曜日には営業ができた。感染者の発生から丸一日で社員全員が安心して通常作業に戻れ、事務所機能は5日で回復。被害は最小限に抑えられた。

 この事態を振り返り、横浜支店で対応した業務課主任佐藤彰寿はこう語る。

 「弊社では2020年2月の感染症拡大以降、常に先手先手で対策を講じてきました。もともと社員に対する対応の手厚い会社です。その結果が今回の早期対応に繋がったと思っています」

 巷では、感染した社員の休業中の補償賃金を出さない問題や、社員の休業補償のために国が支給した「雇用調整助成金」をあろうことか特別利益に計上したケースも報告されている。さらにはなはだしい場合には、感染により会社が休業に追い込まれたケースで、その社員に対して「損失を補填しろ」と要求する無茶無謀なケースもあるという。

社員にも、パートにも、家族にも、内定者にも手厚い保護

 そうした中で、社員の安心安全を最優先する長府工産の対応は、まさに「社員の幸せを創る経営」だ。しかも社員の感染時から対応したのではなく、コロナが騒がれだした直後から社をあげて対応に手厚く取り組んでいる。その具体策を列挙してみよう。

・2020年4月の段階で、アベノマスクが配布される以前から社員(パート含む)全員にマスク各50枚支給(予算をつけずに枚数確保を前提に)

・リモート対応になった営業社員には一日一律1・5時間分の残業手当てを支給。夜も自宅に営業の電話がかかってくるからという理由。

・外出自粛となった2020年4月から5月中旬まで、横浜支店では遠隔地に住む社員とパート全員を、公共交通機関を使わないで済むように朝夕社用車で送迎した。

・大阪支社のパート社員が「子どもの学校が休校になったので出社できない」と訴えると、小学生の子どもがいる女性社員全員に「オレンジカード=特別休暇」の使用を推奨。リモート勤務できる人はリモート対応となった。

・2021年度に入社が内定している新入社員6名に対して、2020年5月から入社まで(希望者のみに)アルバイト等がしにくくなったという理由で毎月5万円の奨学金を10カ月間支給。返済は入社後毎月一万円で期間を25カ月間とした。

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筆者

神山典士

神山典士(こうやまのりお) ノンフィクション作家

1960年埼玉県生まれ、信州大学人文学部卒業。96年『ライオンの夢、コンデ・コマ=前田光世伝』にて小学館ノンフィクション賞優秀賞。2011年『ピアノはともだち、奇跡のピアニスト辻井伸行の秘密』(講談社、青い鳥文庫)が全国読書感想文コンクール課題図書選定。14年「佐村河内事件報道」により、第45回大宅壮一ノンフィクション賞(雑誌部門)雑誌ジャーナリズム大賞受賞。「異文化」「表現者」「アウトロー」をテーマに様々なジャンルの主人公を追い続けている。最新作は『知られざる北斎』(幻冬舎)、『もう恥を書かない文章術』(ポプラ社)『成功する里山ビジネス~ダウンシフトという選択』(角川新書)「社員の幸せを創る経営」(幻冬舎)等

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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