マイナンバー、COCOA、テレワークの普及を阻むもの
2021年05月14日
菅政権の看板であるデジタル改革関連法案が12日成立した。デジタル庁を設置し、国・自治体のデータ形式や様式を共通化する。コロナ対応で時代遅れが露呈した行政システムの効率化を狙っている。
しかし、いくらデジタル化しても、その利用を個人の意思に任せた場合、参加率が2割程度まで進んだあと頭打ちになる現象がよく起きる。これを専門家は「オプトイン2割の壁」と呼ぶ。
「オプトイン」のオプトとは「選択する」という意味で、オプトインは自分の意思で参加するかどうかを決めることをいう。詳しい説明は後回しにして、実際の数字(下の表)を見てみよう。
デジタル化法案の中心にあるのがマイナンバーだ。国民一人ひとりに割り当てられた12ケタの数字で、その番号に行政手続きに必要な個人情報をヒモ付けることで、国と自治体の情報交換が効率化され、利用範囲が広がる。
これまでは「利点がよく分からない」というのが国民の正直な感想で、交付が始まって5年後の今も、マイナンバーカードの累計交付枚数は約3600万枚、交付率は28%にとどまっている。
昨年は、コロナに伴う10万円一律給付やポイント還元(マイナポイント)というインセンティブがあり1185万枚増えたが、「ほとんどの国民に」という政府目標にはほど遠い。
2つ目のCOCOA(ココア)は昨年、コロナ感染予防の期待を背負って登場したが、アプリのダウンロード数は2680万件、全人口の21%にとどまり、「2割の壁」を如実に示した。
更に感染者からのデータ提供はわずか1万数千件、参加率2%で、実際にはほとんど役立っていない。しかもアンドロイド系スマホの不作動が4か月間放置されていたことが判明し、政府が作るシステムの杜撰さが際立った。
3つ目のスマートシティはデジタル化のモデル社会を目指す政府のプロジェクトだ。市民が提供するエネルギー利用、医療、購買などのデータをAIやビッグデータで解析。市民は見返りに省エネ、病気予防、防災などで恩恵を受ける。
全国の自治体から31件の申し込みがあり、夏までに5件を選ぶ予定だ。しかし、先駆的な会津若松市のケースでは、市民の参加率は約20%止まりで、個人情報を運営側に渡すことへの拒否反応がうかがえる。
4つ目のテレワークはどうか。日本生産性本部の資料によると、職種による違いはあるが、今年1月の実施率は平均22%だった。政府がテレワークを呼び掛けた昨年5月は32%まで行ったものの、その後は2割まで下がってきた。
働く人からは「上司や先輩が出社するのでテレワークにしづらい」「出社する人はエライ、という風潮がある」「パソコンを使えない上司がいる」といった声が聞かれる。
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