メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

「ここが正念場」という言葉の落とし穴 命か経済かの二者択一は正しいのか

元東京都福祉保健局技監が考える新型コロナ対策のロードマップ

岩崎賢一 朝日新聞社 メディアデザインセンター エディター兼プランナー

首長、専門家が放った期待感抱かせるフレーズ

――首相や知事と一緒に会見する専門家、テレビのワイドショーに登場する医師、インターネットや新聞、雑誌を含め、様々な専門家や医療従事者がそれぞれの解説を展開しています。人々がどのようなプロセスでどのような情報に接するかは、時代を反映し、かなり多様です。

 診療の最前線にいる医師は、目の前の患者を救うことに努力し、非常に疲れています。だから、なんとか感染者数を減らして欲しいと願っているし、それを強く主張することは間違っているとは思いません。
感染症の専門家が、人との接触を遮断する、人の流れを断ち切れば感染者が減るだろうというのも正しいことです。

 しかし、そうするとつぶれる企業、つぶれる飲食店が多く出てくるでしょう。できれば、社会生活を維持しながら感染拡大を抑えたいというのが、行政関係者の意識にはあります。

 新型コロナは、飛沫感染、接触感染、特殊な環境下でのエアロゾル感染でうつることが、わかってきています。潜伏期間が長い、無症状者でも感染させる恐れがあるのが、怖いところです。

 これを前提に考えると、感染確率を8割下げることで、人との接触を8割減らすのと同等の効果が得る方法はないでしょうか。つまり、ウイルスが感染しない環境を整える施策を打っていくということです。もちろん、それはみんなが行わなければなりません。個人防衛ではなく、社会防衛として行うのです。

 本人たちがマスク会食にしても、周囲の人たちがマスクを外してワイワイ楽しんでいたら、感染リスクが下がっているとはいえません。そこがわかっていない人たちがいるので、「公園で飲むならいいだろう」と考える人たちがでてきてしまうと思います。

 これについても首相や知事が会見で一生懸命説明していますが、もともと公衆衛生におけるリスクコミュニケーションの経験が少ないため、「三密」や「5つの小」など端的でわかりやすい言葉に頼ってしまうのだと思います。

新型コロナ・キーパーソンに聞く・桜山豊夫さん拡大「基本的対処方針分科会」を終え、取材に応じる政府の対策分科会の尾身茂会長=2021年5月21日午前11時36分、東京都千代田区

――メッセージがシンプル過ぎてしまい、情報を受ける側に伝えるべくメッセージと違う印象を与えてしまうということですね。

 専門家が詳しく、かみ砕いて説明していても、発する言葉の中にはメッセージと逆の印象を与えてしまうことがあります。例えば、「ここが正念場」だとか、「重要な時期」という言葉は、ここを乗り切れば何とかなるという印象を与えてしまう恐れがあります。

 国民の努力によって欧米に比べて小さな波に抑えられてきたので、そこで「ここが正念場」というメッセージを出すと、ゼロにはならないけど収まるのかなという期待を抱かせてしまったのだと思います。最初から長く続くんだという覚悟を持って、長く続けられる対策を考えるべきでしょう。これを考えるのは、国でいえば厚生労働省だし、都でいえば福祉保健局です。

・・・ログインして読む
(残り:約2673文字/本文:約5211文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

岩崎賢一

岩崎賢一(いわさき けんいち) 朝日新聞社 メディアデザインセンター エディター兼プランナー

1990年朝日新聞社入社。くらし編集部、政治部、社会部、生活部、医療グループ、科学医療部などで医療や暮らしを中心に様々なテーマを生活者の視点から取材。テレビ局ディレクター、アピタル編集、連載「患者を生きる」担当、オピニオン編集部「論座」編集を担当を経て、2020年4月からメディアデザインセンターのバーティカルメディア・エディター、2022年4月からweb「なかまぁる」編集部。『プロメテウスの罠~病院、奮戦す』『地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン』(分担執筆)。 withnewsにも執筆中。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

岩崎賢一の記事

もっと見る