接種率40%で感染者数が激減した!
2021年06月04日
菅政権の政権支持率が低迷している。例えば、NHKが毎月行っている世論調査では、5月の支持率が35%と発足以来最低を記録している。
http://www.nhk.or.jp/senkyo/shijiritsu/
政権支持率は調査機関毎に独特のクセがあり、支持率には31~43%くらいの幅がある。だから支持率の「絶対値」はあまり当てには出来ないが、時系列で見たトレンドはどの調査機関でもほとんど同じである。
それは、新型コロナの感染が急拡大した昨年12月に急低下して、以降一貫して低水準にあることだ。また、昨年12月には不支持率が急拡大して、今年に入ってからは、月毎に多少の変動があるものの、概ね不支持率が支持率を上回っている。
なお、この世論調査のトレンドは、国民の60~70%が政権のコロナ対策を支持していないことと整合的である。いわゆる「コロナ対策」は自治体によって政策に差があり、感染の深刻度にも地域によって差があり、必ずしも全てが中央政府の責任とは言えないが、国民はそんなところは見ない。上手くいかないものは全て政権の責任だということになるのは、危機管理の問題である以上、已むを得まい。
一方、国民の半数以上がオリンピックの予定通りの開催に反対しており、中止または延期を求めている。だが、菅政権のこれまでの動きを見ると、何があろうとオリンピックは開催されるのではないだろうか? 本稿執筆時点(6月1日)では、むしろ「どうやって観客を入れて開催するか」が政権内では議論されているようだ。
国民がオリンピックの開催に不安を覚える理由は、これによる感染拡大と医療の逼迫である。東京都と関西圏に緊急事態措置が出されており、とりわけ関西圏(大阪・兵庫)では、医療の逼迫で重症者でも入院できずに亡くなられるような悲惨な事例が報道されている。このような足下の状況から、「オリンピックは無謀だ」と考える人が増えるのも当然だ。著名な経済人の中にも、政府に再考を求める人が出てきている。
しかし、菅政権は、オリンピックの中止や延期を求める世論に耳を貸すつもりはなさそうだ。
その代わりに力を入れているのが、ワクチン接種のスピードである。菅首相は6月の半ばまでに1日に100万回の接種が可能となるような体制を整えると述べている。
あまり報道されないが、政府の発表では、ファイザーのワクチン7,200万人分、モデルナのワクチン2,500万人分、アストラゼネカのワクチン6,000万人分の今年中の供給が既に確保されているという。これは大変な量である。ファイザーとモデルナを合わせると9,700万人分であり、これだけで日本の人口の77%に当たる。今やアストラゼネカのワクチンを他国に回すことが検討されている。これだけの量のワクチンを確保したことは、政権の業績として素直に評価されて良いのではないだろうか。
ファイザーとモデルナのワクチンはmRNAワクチンと呼ばれ、これまでにない全く新しい技術を使ったワクチンである。その発症予防効果もそれぞれ95%、94%と極めて高い。現在、世界で使われている新型コロナのワクチンのなかでは、最も優れた発症予防効果を持つワクチンである。
これまでにワクチンの接種がいち早く進んだ国は、先進国の中ではイスラエル、英国、米国である。このうち、ファイザーのワクチンのみを使っているのがイスラエルなので、ここでイスラエルのワクチン接種の進展とその感染予防効果を見ておきたい。日本はファイザーとモデルナのワクチンを使用するので、イスラエルの経験を後追いしていると考えられるからだ。
以下の記述は、日経とフィナンシャル・タイムズのデータ・サイトに依拠している。
イスラエルでは、昨年12月からワクチンの接種が始まり、1月半ばに全人口の10%、2月の初めに20%、3月の初めに40%、4月の初めに55%が接種を完了している。なお、その後はワクチンの接種がほとんど進んでいない。
それでは、イスラエルの感染状況は、ワクチン接種の進捗によりどのように推移したのだろうか?
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