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五輪、ワクチン、自粛で怒りの炎が燃えさかる 「正義感が攻撃性を正当化してしまう危険性」

コロナ禍の怒りについてアンガーマネジメントの専門家に聞く

岩崎賢一 朝日新聞社 メディアデザインセンター エディター兼プランナー

情報に振り回された結果、社会の大きな怒りに

――少し具体的に教えてください。

 いま、多くの人が大量のマイナス感情やマイナスの状態といった燃料をため込んでいて、そこに色んな火種がでてきているので、次々と怒りの炎が燃えていくのです。そういう構図がいま至るところにあります。

 例えば私の周りでは、高齢者のワクチン接種のため、子ども世代・孫世代が総出でネット予約や電話予約をしていました。ワクチンに関する報道などを見て予約できないのではないかと不安になり、その対応への怒りがわく人もいたようです。予約が取れない人だけでなく、直接関係ない人までもが義憤を感じ、怒りの声を上げています。次々起こる状況に対して怒りがわいてきて、社会全体で大きな怒りになっていく状況です。

 ところが、別の高齢者の集まりでは「もう1回目のワクチンを打ってきましたよ」という話が聞かれ、予約も接種会場もスムーズに回っているといわれました。私は自分の経験から「高齢者世帯は大変だっただろう」と思っていましたが、実際にうまく回っていた地域もありますし、これだけ大規模なオペレーションであれば、多少のトラブルは想定の範囲と捉えた人もいるのです。こうした怒りは、情報に振り回された結果、起きているものもあると思います。

 ニュースが流れると怒りがわいてきて、SNSで誰かを攻撃してみたり、苦情の電話をかけてみたりしてしまう――。こうしたことは、適切ではない発散方法で、こういうことがいま起きているのだと思います。みんなが困っているから自分が声を上げているというような正義感が、攻撃性を正当化してしまう危険性があります。

キーパーソンに聞く・田辺さん拡大大型連休初日の横浜中華街。観光客はいたがコロナ禍の前のようなにぎわいは見られなかった=2021年4月29日午後1時36分、横浜市中区山下町

多くの人が小さなストレスが積み重なってあふれる寸前

――新型コロナ対策は数年単位で続くものです。予想以上のワクチン開発が早く、有効性が高かったという評価をする専門家が多いですが、日本はワクチン開発後進国という現実に不満や疑問を持っている人が多いと思います。1年前は、国民性もあってか、法的強制力を使わなくても欧米に比べて感染拡大を抑え込めた「優等生」でした。こういうこともあり、胸のうちのどこかに日本人の自尊心を傷つけられたと感じ、劣等感にさいなまれて、怒りをぶつける人たちもいるのではないでしょうか?

 一人ひとりが小さな組織の中で承認欲求が満たされないとか、人と比べて劣等感を持つとかということによって、精神状態を不安定にしてしまうことがあると思います。怒りをぶつける人のなかには、個人の力の及ばないような内容に対して、怒り、攻撃している人もいます。情報があふれるなかで、自分が取捨選択して行動を選ぶことが求められています。ネットの情報に敏感な人の中には、あえてそういう情報から距離を置いている人もいます。

 大きな出来事がなくても、長い間、自粛や制限下で生活をしていると、まじめな人ほど、「みんな一緒だから」と考えて頑張ってしまい、知らず知らずのうちにストレスをため込んで疲弊してしまいます。仕事に影響があったり、身近な人が感染したりといった大きな出来事を経験した人たちは本当に大変だと思います。その一方で、小さなストレスが積み重なり、知らないうちにあふれる寸前になっている状態の人もいると思います。

 例えば、昨年の秋口ぐらいから、医療や介護現場でのストレスの対処についてアドバイスを求められることが増えました。これもその一つだと思います。

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筆者

岩崎賢一

岩崎賢一(いわさき けんいち) 朝日新聞社 メディアデザインセンター エディター兼プランナー

1990年朝日新聞社入社。くらし編集部、政治部、社会部、生活部、医療グループ、科学医療部などで医療や暮らしを中心に様々なテーマを生活者の視点から取材。テレビ局ディレクター、アピタル編集、連載「患者を生きる」担当、オピニオン編集部「論座」編集を担当を経て、2020年4月からメディアデザインセンターのバーティカルメディア・エディター、2022年4月からweb「なかまぁる」編集部。『プロメテウスの罠~病院、奮戦す』『地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン』(分担執筆)。 withnewsにも執筆中。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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