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新型コロナ対策の「大誤解」を解く~なくならないウイルスとどう付き合うか

国立病院機構仙台医療センターの西村秀一ウイルスセンター長に聞く

杉浦雄大 編集者・ライター

拡大MOON_RABBIT/shutterstock.com

 首都圏や大阪などを対象とする緊急事態宣言が6月20日、解除されました。一部の地域は「まん延防止等重点措置」に移行し、飲食店への時短要請など規制は継続されています。新型コロナウイルスの感染拡大から1年半余り。果たして各種規制や、私たちの「自粛」のあり方は効果があったのでしょうか。

 国立病院機構仙台医療センターの西村秀一ウイルスセンター長は「現在取られていたり、メディアで繰り返されたりしている対策は的外れなことが多い」と指摘します。本当に効果的な対策とは何なのか。6月23日に『もうだまされない 新型コロナの大誤解』(幻冬舎)を出版された西村先生に聞きました。

拡大国立病院機構仙台医療センターの西村秀一ウイルスセンター長

様々な弊害を生むトンチンカンな対策

 確かに新型コロナはやっかいな病気です。人体に悪影響を及ぼすウイルスによる感染症を怖がることはもちろん必要です。ただ、新型コロナウイルスは呼吸器系のウイルスだという大前提を欠いている対策があまりにもまん延しています。呼吸器系ウイルスの専門家の目からすると、思わず笑ってしまうものも少なくありません。

 例えば、スーパーや飲食店に設置されているアクリル板、あるいはスーパーでの商品の消毒、フェイスシールドやマウスシールドなどですが、これらの感染対策はあまり意味のないことがほとんどです。こうしたゼロリスクを追求するあまりの過剰な対策で、本来は必要がない不自由が生じています。

 一方で、こういった対策をしなければ、営業できない、補助の対象にならない、というのも事実です。現場の方々は、営業できるのか否かという不安の中、試行錯誤しながら対策をとってきました。そのもとになる当局からの指導が、誤った情報やそれに基づくガイドラインにそって行われるとすれば、問題は深刻です。

 もっと言えば、こうしたトンチンカンな対策が、役に立たないどころか、コロナ以外で健康への悪影響を及ぼしたり、社会の分断などの弊害も生んでもいる。正しい知識、情報に乗っ取って、冷静に判断し、実生活で不自由さを感じている人たちを解放したい。そのような願いを込めて、私はこの本を作りました。

パーテーション・ビニールカーテンが危険なことも

拡大図1
 意外に思われるかもしれませんが、スーパーやコンビニのレジに設置したビニールカーテンが、かえって危険なこともあります(図1)。確かに、目の前の客が出す飛沫はある程度、防げるでしょう。しかし、コロナ感染のリスクを高めるのは、すぐに地面に落ちる大きな飛沫よりも、空中を漂う「エアロゾル」なのです。

 エアロゾルとは、空中を漂う広義の飛沫と飛沫核のことです。人が出すエアロゾルは、咳やくしゃみによるものだけではありません。呼吸や会話などあらゆる場面で、常につくられています。

 店員のすぐ後ろに壁がある場合、店内の客が咳をして、カーテンのすき間からウイルスを含むエアロゾルが入ってきたら、壁とカーテンに囲まれた狭い空間からエアロゾルはなかなか抜けていかず、店員は長時間、それにさらされることになります。

 ビニールカーテンでウイルスを避けられるはずが、逆にウイルスを吸い込みかねないリスクが高まるのです。要は、閉鎖された場所では、パーティションなどはむしろない方が安全なのです。

 飲食店に設置されているアクリル板についても、同様のことが言えます。直進する飛沫は止められても、小さなエアロゾルは空中を漂い、アクリル板などは簡単に超えます。アクリル板で空気の流れを止めるより、空気が流れてウイルスが店内から出ていくようにするほうが、はるかに望ましい。真に有効な対策とは、換気をしっかりすることに尽きるのです。

 飲食店は、新型コロナ対策のガイドラインとして客とキッチンをビニールカーテンで仕切るように指導され、そうしなければ補助の対象から外されてしてしまう、と聞きます。これは明らかに間違った指導です。

 間違いだらけであっても、ガイドラインとして示されると、私たちはまずは信じてしまうのが普通です。しかし、繰り返しになりますが、換気をしっかりすることが最も重要なのです。飲食店の店主、現場で働くみなさんに、正しい知識を持って対応してもらえればと思います。

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筆者

杉浦雄大

杉浦雄大(すぎうら・ゆうた) 編集者・ライター

1988年千葉県生まれ。2014年日本経済新聞社入社。大阪で地検特捜部や裁判所、東京でエネルギー関連企業の取材経験を経て、現在は出版社にて編集者兼ライターとして勤務。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです