杉浦雄大(すぎうら・ゆうた) 編集者・ライター
1988年千葉県生まれ。2014年日本経済新聞社入社。大阪で地検特捜部や裁判所、東京でエネルギー関連企業の取材経験を経て、現在は出版社にて編集者兼ライターとして勤務。
※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです
国立病院機構仙台医療センターの西村秀一ウイルスセンター長に聞く
そもそも、新型コロナウイルスは呼吸器系のウイルスです(図2)。呼吸器系ウイルス感染症が広がる原因は、あくまで「空気感染」拡大です。粒子の大きさや乾燥の程度に関係なく、エアロゾル中のウイルスを、それが浮遊する空気を吸い込んで感染するのが、エアロゾル感染であり空気感染です。
ここのところを理解しないと、いつまで経っても空気感染の本質を理解できず、正しい対処ができないことになります。
ムダな対策の代表格は、身の回りにあるものをアルコール消毒することでしょう。ほとんどのスーパーやデパート、金融機関などの入り口に置いてある手のアルコール消毒用の“関所”もそうです。これは単なるアリバイ作りで、感染コントロールにほとんど役立っていません。
アルコール消毒は、一般人の通常の生活では必要ありません。飲食店でも不要です。テーブルはもちろん、椅子はなおさらです。なぜか。私たちの環境中に生きたウイルスはそんなにいないからです。さらに、アルコール消毒は、消毒するものに汚れがついている状態だと、効果はありません。
実は不要なことを、真面目にやっている(やらされている)店の人たちを見るにつけ、かわいそうになってきます。
アルコールの効果を発揮させようと思ったら、消毒する前に、まず手を石けんで洗ったり、机をきれいな雑巾で拭いたりする必要があります。逆に、手洗いや机の水拭きさえすれば、アルコール消毒などしなくてもいいのです。もともと少ないウイルスを、洗い流したり拭き取ったりしてしまえば、実はほとんど残らないのです。
そう考えると、換気がしっかりしているラーメン店や焼肉店などは、自粛の必要などない、「安全地帯」と言えるでしょう。店側がリスクを避けるための工夫をすれば、営業してなんの問題もありません。(図3)
ラーメン店は、麺を茹(ゆ)でる湯気や炒め物の油や匂いが店内に充満しないよう、強力に換気をしています。大きな換気扇を使っている店は、安心していいでしょう。客が多くても、隣同士でマスクを外して大声で会話しない限り、まずは大丈夫。
また焼き肉店は、キッチンの換気扇に頼らなくても、客の前に強力な換気装置があり、煙と一緒に周囲の空気を瞬時に吸い込んでくれるので、グリルを囲んだ対面の会食でも安全です。
反対に