これは日本全体の構造問題だ
2021年07月09日
今年6月、三菱電機が鉄道車両の空調設備とブレーキやドアに使う空気圧縮機で検査を偽装していたことが明らかになった。その手口は、契約内容と異なる方法で試験をしたり、架空のデータを記入したりしていた。
驚くことに架空データを自動的に作る「専用プログラム」を開発し、それを使っていた。これは世界を騒がせたフォルクスワーゲン社の排ガス検査に関するニセプログラムと同じで、故意であり、確信犯と言えよう。
しかも1985年頃から35年以上の長きにわたり、偽装していたと言う。三菱電機グループは2018年以降だけでも計6件の検査不正を発表しており、全社的な総点検を3回実施したが、本件を見抜けなかったと言う。社内総点検の限界を示している。
三菱電機は安全に直結するブレーキ関連設備の検査不正にかかわらず、「製品の安全に問題はない」と説明している。乗客としても心配になる。
35年間、検査不正をして安全の問題がないと言うのは、どういうことだろうか。他社の例では、「過剰な品質を求められていますから、検査に合格しなくても安全の問題はないのです」と、言われることがある。今回も同じ性格の問題ならば、合理的な基準や契約内容に変えて、それをキチンと守るべきだ。
それとも、ユーザーや乗客に不安を与えないために、とりあえず「安全の問題はない」と説明しているのだろうか。
三菱電機は社外弁護士らによる調査委員会を作り、原因を究明し、再発防止策を9月に公表すると言う。
内容を予想してみよう。
(1)原因は事業部の縦割り、品質管理部門の閉鎖性・人事の固定、本社の管理不行き届き、おごった企業風土などにある。
(2)ユーザーや社会に対する責任の取り方として、既に発表された社長の辞任の他、他の役員、担当者をかなりの数、処分する。
(3)再発防止策として、横割りの品質管理部門の設置、人事ローテーション、研修、企業風土の改革などであろう。
もしこう言う内容であれば、過去の問題が起きた時の再発防止策と余り変わらないかもしれない。
国内の大手メーカーで、製品のデータや検査を巡る不正が相次いでいる。
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください