後進性を世界に発信した五輪組織委。「オールド・ボーイズ・ネットワーク」の限界
2021年07月22日
「どんないじめをしたの?」と興味を抱いてネット検索し、当時(1990年代)の2雑誌のインタビュー記事を読んだ人は、余りのおぞましさに呆然としたことだろう。
多くの新聞やTVニュースはその内容を曖昧にしか伝えなかった。朝夕の食事どきに家族で話題にするのもはばかられ、被害者に二次被害が生じないとも限らない内容だったからだろう。
しかし、それを読まなければ、なぜこれほど強烈な批判が殺到するのか、その深刻さが理解できない。
7月19日の朝日新聞デジタルは、英テレグラフ紙を引用してこう書いた。「ぞっとするような虐待。障害のある同級生を箱に閉じ込め、他の生徒の面前で性的行為を強要し、排泄物を食べさせた」。
小山田氏は、「(こうした行為を自分は)直接はやりませんよ。アイデアを提供するだけ(笑)」とも述べている。自分は手を汚さず、虐待の実行はいじめ仲間にやらせるという手口である。
いじめを苦に子供が自死する事件が全国で後を絶たない。その背後にはこれと同じような残虐な行為があるのだろうと、想像できる。
彼のインタビューは過去の何度かネット上で問題になっていたという。橋本聖子会長は20日「チェックしていなかった」と説明したが、人選した演出担当者らは音楽業界に精通した人々であるから、当然知っていた上で選んだのだろう。
14日に作曲チームのメンバーが公表されると、ネットは大騒ぎになった。しかし、橋本会長、武藤敏郎事務総長(元大蔵・財務事務次官)、高谷正哲スポークスパーソンは19日に至るまで、「本人は反省し謝罪しており、続投させる」と主張した。
まず「反省・謝罪→続投」を持ち出して世間の反応をうかがうやり方は、今年2月の森喜朗会長辞任の際にも使われた。
森会長は「女性がいると会議が長くなる」と女性をひとくくりにして蔑視する発言をした。批判が出て森氏がしぶしぶ謝罪すると、組織委は「本人が謝罪したから続投させたい」と擁護し、幕引きを図ったのだった。
森氏の「続投」が五輪における差別容認を宣言するのに等しいことが、組織委には理解できていない。今の世界の人権感覚は日本と違い、そうした差別発言を許すことはない。一層の反発を受けた挙句に、森氏は袋叩きされるように辞任に追い込まれた。
このとき世論の前に敗退したのは、森氏個人というより、森氏を頂点として武藤事務総長ら気心の知れた官僚やOB、与党政治家、電通幹部、スポーツ団体トップらを集めた五輪組織委という権力ピラミッドが敗退したのである。
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