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豊かな森林を残した日本の「文明の形」

森と水の循環系に成立した「稲作漁撈文明」

榊原英資 (財)インド経済研究所理事長、エコノミスト

世界有数の森林国家・日本

 日本が四方海に囲まれた海洋国家であることは広く認識されているが、日本が世界有数の森林大国であることはあまり知られていない。日本の森林率(国土に占める森林の割合)は68.2と、世界の先進国の中で、第2位を占めている。因みに1位はフィンランド73.9%、3位はスウェーデンの66.9%となっている。アメリカの33.1%、ドイツの32.7%とくらべると日本の森林がいかに多いかがお判りになるだろう。(FAO=国連食糧農業機関調べ)

 日本が北欧並みの森林率を維持できたのは、日本の「文明の形」によるところが少なくない。米を主食として、魚からタンパク質を摂取する日本の食文化の在り方が、「稲作漁撈文化」という森林を維持する文明を支えてきた。これに対し、麦作と牧畜をセットにしたヨーロッパでは、大森林を開墾して放牧と小麦畑を作らざるを得なかった。11〜12世紀はヨーロッパの大開墾時代に、ブナやナラ等の大森林が次々と破壊され、放牧と小麦畑に姿を変えていったのだ。

Stivog/shutterstock.com拡大Stivog/shutterstock.com

 ヨーロッパでは前述した北欧やロシアを除けばどこも森林率が低く、イギリスの森林率は11.8%、フランスは28.3%、イタリアは33.9%、ドイツは32.7%に過ぎない。ドイツのグリム童話には森の話が多く出てくる。ヘンゼルとグレーテル、赤ずきん、いばら姫(眠れる森の美女)、白雪姫など、絵本や映画でしばしば描かれている森なのだが、実は北欧を除くヨーロッパの森の割合は日本の半分もない訳なのだ。

鎮守の森を作った知恵

 近代まで肉食をしなかった日本は、米と魚を主たる食糧として、森を守ってきた。

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筆者

榊原英資

榊原英資(さかきばら・えいすけ) (財)インド経済研究所理事長、エコノミスト

1941年生まれ。東京大学経済学部卒、1965年に大蔵省に入省。ミシガン大学に留学し、経済学博士号取得。1994年に財政金融研究所所長、1995年に国際金融局長を経て1997年に財務官に就任。1999年に大蔵省退官、慶応義塾大学教授、早稲田大学教授を経て、2010年4月から青山学院大学教授。近著に「フレンチ・パラドックス」(文藝春秋社)、「ドル漂流」「龍馬伝説の虚実」(朝日新聞出版) 「世界同時不況がすでに始まっている!」(アスコム)、「『日本脳』改造講座」(祥伝社)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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