小此木潔(おこのぎ・きよし) ジャーナリスト、元上智大学教授
群馬県生まれ。1975年朝日新聞入社。経済部員、ニューヨーク支局員などを経て、論説委員、編集委員を務めた。2014~22年3月、上智大学教授(政策ジャーナリズム論)。著書に『財政構造改革』『消費税をどうするか』(いずれも岩波新書)、『デフレ論争のABC』(岩波ブックレット)など。監訳書に『危機と決断―バーナンキ回顧録』(角川書店)。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
総選挙の争点に、野党は活発な議論を仕掛けてほしい
持論を封印したか、それとも原発推進派への転向か。
本心はよくわからないが、河野太郎氏は、自民党総裁選に立候補する意思を表明した9月10日の記者会見で、原発の再稼働を認める考えを示した。他の候補はもともと原発推進派とみられるから、今回の総裁選で自民党は「原発ゼロ」あるいは「脱原発」という選択肢を否定し、原発の大量再稼働に進もうとする姿を国民にさらすことになりそうだ。
多様な選択肢を捨てる自民党は、ますます狭量な支配への道を進むのだろうか。野党は、総選挙でこれにどう対抗するのだろうか。
立候補の表明会見に臨んだ河野氏のキャッチコピーは、「日本を前に進める。自民党を変え、政治を変える。日本の危機に全力で」。しかし、その口から飛び出したのは、安倍晋三氏とよく似た国家観や、自民党のこれまでのものと変わらない「原発再稼働」路線だった。
最初に質問に立った記者が、エネルギー政策について聞いた。
「かつて河野大臣は超党派で原発ゼロの会というものを作り政策提言として、政治がなすべき第一は原発ゼロに向かうという決断だと提言にまとめていると思います。先日のぶら下がりでは、安全が確認された原発を当面使っていくことはあると述べられているが、お考えが変わったということなのか、それともこれまでの持論を抑えているのか。国民にはわかりにくく見えます。この点をわかりやすくご説明いただけますか」
これに対し、河野氏は、すらすらと答えた。
「いずれ原子力はゼロになるのだろうと思っておりますが、カーボンニュートラル、2050年までにこれを達成して気候変動を抑えていくということになる と、まず石炭、石油から止めていかなければなりません。そしていずれは天然ガスからも脱却しなければなりません。そうすると2050年にカーボンニュートラルを実現するためには、ひとつはきちんと省エネをやる、そしてもうひとつは、エネルギー基本計画にもありますように、再生可能エネルギーを最大限、最優先で導入していく、それでも足りないところは安全が確認された原発を当面は再稼働していく、それが現実的なのだろうと思っています」(テレ東BIZ)
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