総選挙の争点に、野党は活発な議論を仕掛けてほしい
2021年09月18日
持論を封印したか、それとも原発推進派への転向か。
本心はよくわからないが、河野太郎氏は、自民党総裁選に立候補する意思を表明した9月10日の記者会見で、原発の再稼働を認める考えを示した。他の候補はもともと原発推進派とみられるから、今回の総裁選で自民党は「原発ゼロ」あるいは「脱原発」という選択肢を否定し、原発の大量再稼働に進もうとする姿を国民にさらすことになりそうだ。
多様な選択肢を捨てる自民党は、ますます狭量な支配への道を進むのだろうか。野党は、総選挙でこれにどう対抗するのだろうか。
最初に質問に立った記者が、エネルギー政策について聞いた。
「かつて河野大臣は超党派で原発ゼロの会というものを作り政策提言として、政治がなすべき第一は原発ゼロに向かうという決断だと提言にまとめていると思います。先日のぶら下がりでは、安全が確認された原発を当面使っていくことはあると述べられているが、お考えが変わったということなのか、それともこれまでの持論を抑えているのか。国民にはわかりにくく見えます。この点をわかりやすくご説明いただけますか」
これに対し、河野氏は、すらすらと答えた。
「いずれ原子力はゼロになるのだろうと思っておりますが、カーボンニュートラル、2050年までにこれを達成して気候変動を抑えていくということになる と、まず石炭、石油から止めていかなければなりません。そしていずれは天然ガスからも脱却しなければなりません。そうすると2050年にカーボンニュートラルを実現するためには、ひとつはきちんと省エネをやる、そしてもうひとつは、エネルギー基本計画にもありますように、再生可能エネルギーを最大限、最優先で導入していく、それでも足りないところは安全が確認された原発を当面は再稼働していく、それが現実的なのだろうと思っています」(テレ東BIZ)
河野氏が持ち出したエネルギー基本計画とは、菅政権が策定中のもので、2030年度における総発電量の20~22%を原発でまかなうというものだ。
この数値は東日本大震災による福島第一原発事故の直前の25%に近い水準で、現状の数%よりはるかに大きい。それを実現するには、再稼働させる原発(現在は10基)をかなり増やさなくてはならず、世論や野党の強い反発が予想される。
また、河野氏が再稼働を認める論拠とした2050年のカーボンニュートラルは、菅政権が打ち出した「脱炭素」構想で、菅首相は再生可能エネルギーの開発に力を注ぐと説明すると同時に、原発の利用も進めると国会で明言してきた。この構想の内実は、脱炭素を掲げた原発再稼働路線とみることができる。河野氏はそれに乗ったわけだ。総裁選で議員票の多数を獲得しようとの思惑が先に立ったのではないか。
しばらくして、別の記者が原発について聞いた。
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