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中国のTPP加入申請、安易な妥協をしてはならない

なぜこのタイミングで申請したのか

山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

極めて高い中国加入のハードル

 そもそも、WTOやEUもそうだが、TPPはクラブのような組織である。加入するためには、その会員(メンバー)にふさわしい条件を備える必要がある。審査するのは、日本など既にTPPに加入している国である。

 その際、二つの条件を中国はクリアしなければならない。

 一つは、TPP協定に定める規律や義務を中国は守ることができるかというものである。中国との関連で重要なものとしては、国有企業、労働、電子商取引、知的財産権がある。結論から言うと、ハードルは極めて高いと言わざるをえない。

 中国市場に進出したり国際市場で活動している企業が、補助金や規制で守られている中国の国有企業と競争しなければならないとすれば、不公平である。国有企業への規律とは、外国の企業が国有企業と共通の土俵で競争できるようにしようというものである。しかし、国有企業は中国経済の中で大きな地位を占めている。中国自身、国有企業の改革は難問である。RCEPには、国有企業の規律はない。WTOにおいて、中国は国有企業に対する規律導入を明確に拒否している。

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筆者

山下一仁

山下一仁(やました・かずひと) キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

1955年岡山県笠岡市生まれ。77年東京大学法学部卒業、農林省入省。82年ミシガン大学にて応用経済学修士、行政学修士。2005年東京大学農学博士。農林水産省ガット室長、欧州連合日本政府代表部参事官、農林水産省地域振興課長、農村振興局整備部長、農村振興局次長などを歴任。08年農林水産省退職。同年経済産業研究所上席研究員。10年キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。20年東京大学公共政策大学院客員教授。「いま蘇る柳田國男の農政改革」「フードセキュリティ」「農協の大罪」「農業ビッグバンの経済学」「企業の知恵が農業革新に挑む」「亡国農政の終焉」など著書多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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