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河野太郎、岸田文雄両氏と田村厚労相、3氏の年金改革案を読み解く

正しく理解し、よりよい選択をするために

高橋義憲 たかはしFP相談所代表

大半の厚生年金加入者にとって改善、低所得者ほど恩恵は大きい

 これは、平均的な世帯であるモデル世帯のものですが、所得水準による違いを表したのが下の図です。

 厚生年金の加入者の年金は、定額の基礎年金と報酬比例の2階建てとなっています。そして、年金額は高所得者ほど高くなりますが、所得代替率は低所得者ほど高くなっていて、これが所得再分配機能と呼ばれているところです。

 それでは、年金額と所得代替率が2019年時点(①、㋐)、現行制度での将来見通し(②、㋑)、改革案での将来見通し(③、㋒)でどのように変化するか見てみましょう。

 まず、年金額は、2019年時点(㋐)を基準に、現行制度での将来見通し(㋑)は、高所得者ほど年金額の上昇幅が大きくなっています。一方、改革案の将来見通し(㋒)だと、㋑と比べて、所得が特に高い方はわずかに低下しますが、それ以外の多くの方にとっては、年金額がアップすることになります。ここで、将来の年金額がアップすることに疑問を感じるかもしれませんが、対物価での年金の実質額は、一定の賃金と物価の上昇を見込む場合には、増加するものである、と理解してください。

 一方、所得代替率の方を見ると、現行制度の将来見通し(②)は、2019年時点(①)と比較すると、低所得者ほど大きく低下していて、すなわち所得再分配機能が低下してしまいますが、改革案(③)だと、②と比較して低所得者ほど大きく上昇していて、再分配機能が改善されていることが分かると思います。

 賃金と物価の上昇が十分でない場合には、年金の実質額はこのように増えるとは限りませんが、経済前提の良し悪しに関わらず、改革案によって年金額と所得代替率は大半の方にとっては改善することになっています。

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 このように、田村大臣が示した改革案は、大半の厚生年金加入者にとって、年金額と所得代替率の改善につながり、特にその恩恵が低所得者ほど大きいものとなっています。しかし、「国民年金と厚生年金の財政調整」というフレーズが、厚生年金の加入者にとって不利であるような印象を与えたことや、メディアの報道の仕方も拙かったため、厚生年金の加入者である会社員を中心に、ネット上では多くの批判的な反応が見られました。

メディアの報道はどこが拙かったのか

 メディアの報道が拙かったというのは、改革案を解説するのに下のような図を用いたことです。

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 この図で言いたかったことは、将来の年金における基礎年金と厚生年金(報酬比例)の比率が、現行制度だと基礎年金の比率が低くなるが、改革案だとその比率が高くなるということでしょう。しかし、この図を見た厚生年金の加入者は、それぞれの2階建ての年金の高さを比較し、改革案の方の高さが低くなっているので、自分たちにとって不利なものであると誤解してしまったのです。

 まあ、そのように誤解するのは仕方ありません。冒頭で話した通り、メディアの発信する情報は残念ながら時に誤解を招く基となっています。しかし、誤解はいずれ解消するだろうと考えていたところ、驚きのニュースが入ってきました。自民党総裁選に出馬した河野太郎氏が年金制度の抜本的改革を唱えているというのです。

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筆者

高橋義憲

高橋義憲(たかはし・よしのり) たかはしFP相談所代表

1964年生まれ。ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士。銀行や証券会社、年金事務所での勤務を経て、「たかはしFP相談所」を設立。金融商品や社会保険制度に詳しく、年金事務所での年金相談などを手がけている。【ホームページ】takahashi-fp.com 【ツイッター】@fp_yoshinori 【フェイスブック】@takahayfp

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです