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新自由主義の見直し掲げる岸田新総裁、最初の試金石は金融所得税制

高額の金融所得者の税負担が下がる矛盾は解消できるか

森信茂樹 東京財団政策研究所研究主幹

 自民党総裁選挙で岸田文雄氏が新総裁に選ばれた。国会の承認を経てわが国の第100代総理大臣に就任する。

 総裁選挙では、4人の候補者の間で、外交・安保から社会保障まで幅広く政策論争が行われたが、これは大変評価すべきことだ。日常にかまける中、サイバーセキュリティーの必要性などを筆者に教えてくれた。

会見する自民党の岸田文雄・新総裁(内田光撮影)拡大会見する自民党の岸田文雄・新総裁(内田光撮影)

 一方、議論は生煮えで、年金問題などテレビのコメンテーターや論説委員の勉強不足、切り込み不足(忖度?)も目についた。例えば河野候補の指摘した将来の国民年金の水準の問題は、岸田候補などが答えた「年金の支え手を増やしていく」ことだけではとても対応できないことは、多くの年金関係者が認識していることである。

注目すべき3点の経済政策とは

 筆者が注目するのは、以下の3点である。

 第一に、公約である新自由主義的な経済政策からの転換と分配重視という政策の具体的内容である。

 アベノミクスの下では、トリクルダウンは生じず、以下の家計調査の分析でも明らかまように、中間層は2分化した。さらにコロナ禍で、所得・資産格差は拡大した。アベノミクスのトリクルダウンに象徴される政策を転換することには大きな共感を覚える。

(図1)所得分布の変化。アベノミクス期は、400万円〜700万円の分布が減少し、高所得層と低所得層に層に分化している拡大(図1)所得分布の変化。アベノミクス期は、400万円〜700万円の分布が減少し、高所得層と低所得層に層に分化している

 一方で、これへの対策として、「経済成長の成果を分配する」というが、これは具体性に欠ける。「分配」とは「負担能力がある者からそうでない者に所得を移転させること」で、筆者は究極の構造改革だと思っている。それは税制と社会保障を組み合わせて行うもので、国家・政府にだけ与えられた権能だ。

 そのためには、負担能力がある者は誰か、いかにしてさらなる負担を求めるかということが明確でなければならない。順番も、経済成長策と同時に分配政策を行っていく必要があるのではないか。適正な分配により国民の生活不安を解消することが消費の拡大を通じ経済成長にもつながっていく、この道も模索すべきだ。

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筆者

森信茂樹

森信茂樹(もりのぶ・しげき) 東京財団政策研究所研究主幹

1950年生まれ、法学博士(租税法)。京都大学法学部を卒業後、大蔵省入省。1998年主税局総務課長、1999年大阪大学法学研究科教授、2003年東京税関長、2004年プリンストン大学で教鞭をとり、2005年財務総合政策研究所長、2006年財務省退官。この間東京大学法学政治学研究科客員教授、コロンビアロースクール客員研究員。06年から18年まで中央大学法科大学院教授、(一社)ジャパン・タックス・インスティチュート(japantax.jp)所長。10年から12年まで政府税制調査会特別委員。日本ペンクラブ会員。著書に、『デジタル経済と税』(日本経済新聞出版)『税で日本はよみがえる』(日本経済新聞出版)、『未来を拓くマイナンバー』(中央経済社)『消費税、常識のウソ』(朝日新書)『日本の税制 何が問題か』(岩波書店)、『抜本的税制改革と消費税』(大蔵財務協会)、『給付つき税額控除』(共著、中央経済社)『どうなる?どうする!共通番号』(共著、日本経済新聞出版社)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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