福井義高(ふくい・よしたか) 青山学院大学大学院国際マネジメント研究科教授
青山学院大学大学院国際マネジメント研究科教授。1962年生まれ、東京大学法学部卒、カーネギー・メロン大学Ph.D.、CFA。85年日本国有鉄道に入り、87年に分割民営化に伴いJR東日本に移る。その後、東北大学大学院経済学研究科助教授、青山学院大学大学院国際マネジメント研究科助教授をへて、2008年から現職。専門は会計制度・情報の経済分析。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
国債は債券ではなく株である
今回の論文の副題は「このままでは国家財政は破綻する」となっている。しかし、国家財政が破綻するというのはどういう事態なのか、矢野氏の主張はあいまいである。「タイタニック号が氷山に向かって突進しているようなもの」というのは具体的にどういうことなのか、浪費による借金で破産した個人や、放漫経営で借入れが返済できず倒産した企業のようになるということであろうか。論文の最後で、「将来必ず、財政が破綻するか、大きな負担が国民にのしかかってきます」とあるけれども、国民はどのような負担をしなければならないのであろうか。
一方で、MMT(現代貨幣理論)に依拠する在野の一部エコノミストは自国通貨建てで(固定利付)国債が発行できる日本では財政は破綻しないと主張している。理論としてのMMTは、日本に限らず、世界的に学界では主流派から相手にされておらず、矢野論文も言及していない。しかし、MMTに基づく財政拡大論は、現実政治の世界では無視できない存在となっている。にもかかわらず、無視し続けることは、反論できないからとみなされ、かえってMMT論者やこれを奇貨として財政支出増を推進する政治家を勢いづかせることになってしまう。