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「決められない」民主党政権を象徴した政治家 脱原発に導けず

【8】枝野幸男経産相の残念な思い出/2011~12年

大鹿靖明 ジャーナリスト・ノンフィクション作家(朝日新聞編集委員)

政策実現に向けた人事権を行使せず、実務家官僚活用にも消極的

 人事権があるのに、その権限を大臣は行使しようと思わなかった。野田の前では「早く原発をやめるべきだ」と持論を開陳したのに、委員の人選をそういう方向に持っていかなかった。

拡大飯田哲也・環境エネルギー政策研究所所長=2012年4月
 委員の一人だった環境エネルギー政策研究所所長の飯田哲也は「いくら大臣が『自分が決める』と頑張っても、事務方のエネ庁の官僚がアジェンダセッティングから何まですべてを決めるので、台本が決まっているんです。最初は『委員の皆さんの意見を整理したい』とソフトに言ってくるので、(形を)変えることができる豆腐かなと思っていたら、いつのまにかカチンカチンのコンクリートになっていて変えられない」と嘆いていた。

 飯田は基本問題委員会の議事運営にかなり失望し、「こうなってみると、果たして大臣が枝野さんで良かったのか鉢呂さんの方がよかったのか、わからないですね」とも言っていた。

 民主党政権は自分たちの政策を実現するためには人事権を行使してもいいのに、官僚機構に介入したと受け取られるのが怖いのか、そうしたことをしたがらなかった。枝野もそうだった。波風を立てたがらないのだ。

 枝野経産相時代にエネ庁の原子力政策課の吉野恭司課長と香山弘文原子力国際協力推進室長の2人が、原子力委員会の近藤駿介委員長らと原子力村だけからなる構成員の「秘密会合」を開催し、極秘裏に核燃料サイクル政策の堅持をしようとしていたことが明るみに出るが、枝野は吉野に口頭で注意しただけで更迭など人事上の制裁を下さなかった。枝野は「僕は大臣ですからね。そのクラスの人事には関心がない」と言った。

拡大鉢呂吉雄前経産相の一連の発言について佐藤雄平福島県知事(左)に謝罪する枝野幸男経産相(右)=2011年9月13日、福島県庁
 竹中平蔵が郵政改革の際に財務省出身の高橋洋一を右腕に起用したように、実務家の官僚を起用して目指すべき政策目標に邁進してもいいのに、そうしない。

 この当時『日本中枢の崩壊』(講談社)を出版して話題になっていた経産官僚の古賀茂明のような人材を起用してもよかったのではないかと尋ねると、「まったくそう思わない。役人である限り、本を出して表で勝手なことをやってもらっては困る。役人の肩書をもちながら外で自分勝手なことをやってもらっては困る」と答えた。そのうえで「役所の人事で無理をしようとは思わなかった。最後は大臣ですから。大臣はものすごい権限を持っていますから」と言った。

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筆者

大鹿靖明

大鹿靖明(おおしか・やすあき) ジャーナリスト・ノンフィクション作家(朝日新聞編集委員)

1965年、東京生まれ。早稲田大政治経済学部卒。ジャーナリスト・ノンフィクション作家。88年、朝日新聞社入社。著書に第34回講談社ノンフィクション賞を受賞した『メルトダウン ドキュメント福島第一原発事故』を始め、『ヒルズ黙示録 検証・ライブドア』、『ヒルズ黙示録・最終章』、『堕ちた翼 ドキュメントJAL倒産』、『ジャーナリズムの現場から』、『東芝の悲劇』がある。近著に『金融庁戦記 企業監視官・佐々木清隆の事件簿』。取材班の一員でかかわったものに『ゴーンショック 日産カルロス・ゴーン事件の真相』などがある。キング・クリムゾンに強い影響を受ける。レコ漁りと音楽酒場探訪が趣味。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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