小此木潔(おこのぎ・きよし) ジャーナリスト、元上智大学教授
群馬県生まれ。1975年朝日新聞入社。経済部員、ニューヨーク支局員などを経て、論説委員、編集委員を務めた。2014~22年3月、上智大学教授(政策ジャーナリズム論)。著書に『財政構造改革』『消費税をどうするか』(いずれも岩波新書)、『デフレ論争のABC』(岩波ブックレット)など。監訳書に『危機と決断―バーナンキ回顧録』(角川書店)。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
岸田政権の経済政策は問題だらけ〈上〉
たとえば、「『ウィズコロナ』下での社会経済活動の再開と次なる危機への備え」のうち約1兆円が「Go To トラベル事業」向けだという。
旅行代金の割引率を従来の35%から30%とし、補助額の上限は従来の2万円から1万3000円に引き下げるというが、税金を使ってまでこの事業をする正当な理由があるのか。とことん国会で議論すべきだ。
感染拡大期にこの事業は火に油を注ぐ結果をもたらした。こんどは感染が収まったからいいだろう、などというのもおかしな話だ。感染の不安が落ち着けば、人々の旅行需要は自然に盛り上がるに違いない。わざわざ税金を投入して応援する必要があるのかどうか。
しかも、この事業は旅行に出かける金や時間のある人達が主な補助対象となる。富裕層や比較的豊かな人々が多く含まれていることは確かだ。
もっと困っている人々への補助を優先しなくていいのだろうか。1兆円の巨費で、できることは沢山ある。多様な選択肢と比較しながら決めるべきではないのか。たとえば、医療や社会保障の担い手で低所得に置かれている人々の給与改善に振り向けるべきではないのだろうか。
経済対策では、「未来社会を切りひらく『新しい資本主義』の起動」の一環として看護師、介護士らの賃上げに約3千億円の財政支出を充てるという。
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