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メディアは、PCR検査やワクチン開発めぐる報道を点検すべし

溢れる情報に翻弄された2年間、「未来としての過去」を心に刻もう

木代泰之 経済・科学ジャーナリスト

 新型コロナが登場して約2年。政府も国民もメディアも、目の前の対応に追われ、情報の洪水に埋もれて時間を過ごしてきた。

 メディアは過去の感染症をきちんと考察しただろうか。PCR検査やワクチン開発の教訓を未来に残そうとしているだろうか。医療が安定している今は、冷静に考える良い機会である。

人類は感染症を克服したはずだったが……

 コロナ以前、感染症はほぼ克服されたと思われていた。コレラ、赤痢などの消化器系感染症は、20世紀に社会インフラが整備されてかなり乗り越えられた。肺結核などの呼吸器系感染症も戦後、ワクチンや抗生物質の登場で死亡原因の下位に落ちていった。

 20世紀後半には、ウイルスによる新興感染症が出現した。HIV(エイズ、1983年)が代表格で、ラッサ熱(1970年代)、エボラ出血熱(1976年)など感染力も死亡率も高い感染症がアフリカから出てきた。

(コロナ感染は2022年1月で丸2年。20世紀前半のスペイン風邪は約3年続いた)拡大(コロナ感染は2022年1月で丸2年。20世紀前半のスペイン風邪は約3年続いた)

次の感染症のパンデミックは2030年ごろか?

 21世紀にはコロナ型ウイルスによる呼吸器感染症が出現した。SARS(2003年)が中国広東省から、MERS(2012年)がアラビア半島から出現。そしてCOVID-19(2020年)となる。

 ほぼ10年おきにコロナ型ウイルスによる感染症が登場している。人間の警戒心が緩んで忘れたころに襲ってくる。してみると、2030年ごろに次のパンデミックが起きるかもしれない。

 その時に備えて、検査、医療体制、薬品・ワクチン開発、メディアの役割など、明らかになった課題を、社会はしっかり心に刻まなくてはならない。

感染初期、厚労省は「PCR検査は精度に限界」と言い訳

 2000年代のSARSやMERSの影響は日本では少なく、厚労省や医学界には感染症を軽く見る風潮が生まれた。これが研究費や病床数の削減につながり、COVID-19で大混乱する原因になった。

民間のPCR検査センター(東京都新宿区、2021年8月6日撮影)拡大民間のPCR検査センター(東京都新宿区、2021年8月6日撮影)

 感染初期の2020年春、医療現場を悩ませたのはPCR検査の体制の不備であった。

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筆者

木代泰之

木代泰之(きしろ・やすゆき) 経済・科学ジャーナリスト

経済・科学ジャーナリスト。東京大学工学部航空学科卒。NECで技術者として勤務の後、朝日新聞社に入社。主に経済記者として財務省、経済産業省、電力・石油、証券業界などを取材。現在は多様な業種の企業人や研究者らと組織する「イノベーション実践研究会」座長として、技術革新、経営刷新、政策展開について研究提言活動を続けている。著書に「自民党税制調査会」、「500兆円の奢り」(共著)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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