溢れる情報に翻弄された2年間、「未来としての過去」を心に刻もう
2021年12月17日
新型コロナが登場して約2年。政府も国民もメディアも、目の前の対応に追われ、情報の洪水に埋もれて時間を過ごしてきた。
メディアは過去の感染症をきちんと考察しただろうか。PCR検査やワクチン開発の教訓を未来に残そうとしているだろうか。医療が安定している今は、冷静に考える良い機会である。
コロナ以前、感染症はほぼ克服されたと思われていた。コレラ、赤痢などの消化器系感染症は、20世紀に社会インフラが整備されてかなり乗り越えられた。肺結核などの呼吸器系感染症も戦後、ワクチンや抗生物質の登場で死亡原因の下位に落ちていった。
20世紀後半には、ウイルスによる新興感染症が出現した。HIV(エイズ、1983年)が代表格で、ラッサ熱(1970年代)、エボラ出血熱(1976年)など感染力も死亡率も高い感染症がアフリカから出てきた。
21世紀にはコロナ型ウイルスによる呼吸器感染症が出現した。SARS(2003年)が中国広東省から、MERS(2012年)がアラビア半島から出現。そしてCOVID-19(2020年)となる。
ほぼ10年おきにコロナ型ウイルスによる感染症が登場している。人間の警戒心が緩んで忘れたころに襲ってくる。してみると、2030年ごろに次のパンデミックが起きるかもしれない。
その時に備えて、検査、医療体制、薬品・ワクチン開発、メディアの役割など、明らかになった課題を、社会はしっかり心に刻まなくてはならない。
2000年代のSARSやMERSの影響は日本では少なく、厚労省や医学界には感染症を軽く見る風潮が生まれた。これが研究費や病床数の削減につながり、COVID-19で大混乱する原因になった。
感染初期の2020年春、医療現場を悩ませたのはPCR検査の体制の不備であった。
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