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過剰医療という「白い巨塔」に挑む医師の闘い

このままでは日本の医療、皆保険制度は崩壊しかねない

原真人 朝日新聞 編集委員

2025年問題で医療費はさらに膨らむ

 日本の財政は社会保障の膨張のために悪化し続けている。国民への社会保障給付費の総額はいまや130兆円規模だ。そのなかで最も大きな比率を占めるのが年金(46%)だが、次に大きな比率で、かつ伸びが著しいのが医療(32%)だ。

 下図「医療費の推移」のグラフをご覧いただきたい。医療費はずっと右肩上がりで伸び続けてきた。2020年度は予算ベースで46.8兆円。ここにはコロナ対策で医療関係に投じた補正予算(4兆円余り)は含まれていないから、コロナ禍の結果、実際はもっと膨らんでいる。2040年にはこれが70兆円近くまで増えると見込まれている。国内総生産(GDP)の伸びをはるかに上回る増加ペースであり、医療費の負担は国民にとって今よりさらに重くなる。

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 下図の円グラフを見ていただくとわかるように、医療費の財源はざっと5割が保険料、4割が国と地方の公費負担(税金)で調達されている。残り1割が患者負担だ。つまり全額が国民の負担となる。国庫負担のうちかなりの部分が借金財政でまかなわれているから、もっと正確に説明するなら、医療は「現在」の国民負担と「将来」の国民負担によって支えられていることになる。負担を将来世代に先送りしているのだ。

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危機原因は「超高齢化」と「医学の進歩」

 医療費が急増し続ける最大の理由は「超高齢化」である。75歳以上の後期高齢者になると、病気にかかって病院で治療を受ける頻度が格段に増えるからだ。65~74歳の前期高齢者になると、1人当たり国民医療費は現役世代の4倍ほどに増えて約55万円となるが、後期高齢者になるとこれが一段と増えて、平均約91万円となる。

 しかも後期高齢者は全体の数そのものもこれから急速に増えていく。2016年に1691万人だった人口が、団塊の世代がすべて後期高齢者になる2025年になると490万人も増え、2180万人になる。国民の5人強に1人が後期高齢者になるということだ。

 そして、医療費急増のもう一つの理由が、医学の進歩によって画期的な治療薬が開発され、その費用が膨らんでいることだ。たとえば、がん治療では薬代だけでも全額自己負担だとしたら年間1000万円以上がかかる。

 薬代が高くなるのは製薬会社の開発コストがかさんでいるためだ。一つの新薬を販売するまでの開発コストは平均3000億円と言われる。そのコストを回収するために薬の値段をどうしても高く設定せざるをえなくなる。

 代表例が、がん治療薬オプジーボである。がん治療で療養していた森喜朗・元首相がこれを使って健康を回復し、東京五輪組織委員会の会長職に復帰したことでも有名になった。この薬は一部の患者には劇的に効果を発揮する。問題はきわめて高額だということだ。当初は1人当たり年間3500万円ほどかかっていた。現在は4分の1ほどまで下がった。

 ただ、國頭氏によると、

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筆者

原真人

原真人(はら・まこと) 朝日新聞 編集委員

1988年に朝日新聞社に入社。経済部デスク、論説委員、書評委員、朝刊の当番編集長などを経て、現在は経済分野を担当する編集委員。コラム「多事奏論」を執筆中。著書に『日本銀行「失敗の本質」』(小学館新書)、『日本「一発屋」論 バブル・成長信仰・アベノミクス』(朝日新書)、『経済ニュースの裏読み深読み』(朝日新聞出版)。共著に『失われた〈20年〉』(岩波書店)、「不安大国ニッポン」(朝日新聞出版)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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