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習近平氏が「独裁」で目指す国家像〜別物になる中国

米国流の資本主義と訣別、その狭間で日本が味わう大きな困難

木代泰之 経済・科学ジャーナリスト

民族意識の高揚を要求されるオンラインゲーム

 昨年8月には、政府系経済紙が、「オンラインゲームは子どもの精神をむしばむアヘンだ」と攻撃した。翌日には削除されたが、衝撃は大きく、証券業界紙によると、中国のゲーム関連企業約30万社のうち3万社以上が倒産したという。

 中国では若年層の失業率が高く、仕事や結婚・出産に無気力な若者が増えている。彼らは持て余した時間をオンラインゲームに費やしている。

 今年1月10日付けの人民日報電子版は、京劇のストーリーや歌唱を題材にしたゲームを紹介し、「伝統演劇とゲームの見事な化学変化」「中国文化に対するリスペクト」と絶賛した。

 従来のオンラインゲームを叩いた上で、党が推奨する方向性を業界と国民に知らしめようとしている。すなわち伝統文化を重んじ、民族意識の高揚や一体化に貢献するゲームを作れという、文化統制の指示なのだ。

習氏に危機感を与えた「海航集団」のデフォルト

 2021年1月、海南省に本拠を置く「海航集団」がデフォルトした。2000年に航空運輸業でスタートし、金融、不動産、物流などに進出。17年には フォーチュン誌のグローバル500社リストにランクインするほど急成長した。

 海航は米国資本主義の手法を手本に、巨額の借金をして内外の企業を次々と買収した。ヒルトン・ワールドワイドやドイツ銀行の大株主にもなったが、18年には過剰負債が原因で赤字に転落。海南省主導で経営再建を図ったが、失敗した。

 海航の創業者と習氏は親しい仲だ。わずか20年で終わった栄枯盛衰を、習氏が重く見たことは疑いがない。その破たん時期は、アリババをはじめ米国とつながる民間企業の規制に乗り出した時期と重なるのだ。

 習氏は海外経験がなくドメスティックな人物として知られる。生き馬の目を抜くような米国の資本主義によって中国経済が翻弄されることに、相当な危機感を覚えたのではないだろうか。

基軸通貨ドル、その還流が米国資本主義の強さ

 米金融市場は世界中から資金を吸い寄せている。その第1の理由はドルが基軸通貨であることだ。石油や金をはじめ世界の鉱物資源や穀物の取引はドルベースであり、ドルの発行権を握る米国の利益は大きい。

 第2の理由は、米国債を発行して各国からドル資金を吸い上げる「ドルの還流」に成功していることだ。その豊富な資金は、米政府が財政支援する民間の先端技術開発や軍事力の強化に投入される。

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筆者

木代泰之

木代泰之(きしろ・やすゆき) 経済・科学ジャーナリスト

経済・科学ジャーナリスト。東京大学工学部航空学科卒。NECで技術者として勤務の後、朝日新聞社に入社。主に経済記者として財務省、経済産業省、電力・石油、証券業界などを取材。現在は多様な業種の企業人や研究者らと組織する「イノベーション実践研究会」座長として、技術革新、経営刷新、政策展開について研究提言活動を続けている。著書に「自民党税制調査会」、「500兆円の奢り」(共著)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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