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南北問題とウクライナ危機が温暖化対策を妨げる

各国の利害に翻弄される脱炭素の不幸

木代泰之 経済・科学ジャーナリスト

 「気温上昇を1.5度以内に抑える」――昨年11月のCOP26で約130か国・地域が合意した努力目標の達成が危ぶまれている。産業革命から150年ですでに約1度上昇しており、残されているのは0.5度しかない。

 1.5度以内に収まれば人類社会は持続可能だが、収まらなければ、地球は温暖化の歯止めを失って徐々に灼熱化に向かう。これは科学の知見である

各国の現状の政策ではCO2排出量を実質ゼロにはできない

 「1.5度以内」の達成には、CO2排出量を2050年までに実質ゼロ(カーボンニュートラル)にすることが必要だ。IEA(国際エネルギー機関)は、2050年までの排出量の見通しを3つのシナリオで示している(下のグラフ)。

2050年までのCO2排出量の見通し(シナリオ別)拡大2050年までのCO2排出量の見通し(シナリオ別)

(1) 黄色の「50年実質ゼロシナリオ」は、2050年にCO2排出量実質ゼロが実現する理想的なケース。気温上昇は1.5度以内に収まる。

(2) 灰色の「発表誓約シナリオ」は、各国が現在発表している政策が公約通りに全て実現するケース。それでも2100年には2.1度上昇する。

(3) 橙色の「公表政策シナリオ」は、各国が発表している政策に、実現の可能性や効果の度合いを加味したケース。2100年には2.6度上昇する。

 このグラフが語るのは、現在の各国の政策を集めても、CO2排出量の抑制は(2)の2.1度上昇が精一杯であり、(1)の「1.5度以内」実現は困難だということである。


筆者

木代泰之

木代泰之(きしろ・やすゆき) 経済・科学ジャーナリスト

経済・科学ジャーナリスト。東京大学工学部航空学科卒。NECで技術者として勤務の後、朝日新聞社に入社。主に経済記者として財務省、経済産業省、電力・石油、証券業界などを取材。現在は多様な業種の企業人や研究者らと組織する「イノベーション実践研究会」座長として、技術革新、経営刷新、政策展開について研究提言活動を続けている。著書に「自民党税制調査会」、「500兆円の奢り」(共著)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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