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容赦なく学生を落第にする米国の大学

特に日本の文科系学生の勉強時間は短い

榊原英資 (財)インド経済研究所理事長、エコノミスト

大学生の学習時間、日米比較

 日本の大学生の一日の学習時間は4時間から6時間。授業・実験が2.9時間、授業に関する学習が1.0時間、卒業論文関連の学習が0.7時間と合計しても4~5時間。大学設置基準で想定している学習量は8時間。その半分程度の学習量なのだ(文科省資料から。リンク先PDF) 。

 日米の一週間あたりの学習時間を比べると、日本は10時間以下が85.2%だが、アメリカは、10時間以下は41.0%に過ぎない 。アメリカの場合、16時間以上が36.1% に昇っている(文科省2012年調べ)。前段落で紹介した資料では、理科系4年生の学修時間は米国を大きく上回っているので、文科系の差が際立つ(ただし日本の理科系4年生の学修時間は卒論関連に割く時間も含んでおり、単純な比較とはなっていない)。

Tero Vesalainen/shutterstock.com拡大Tero Vesalainen/shutterstock.com

 問題は、大学での授業の在り方にも反映されている。日本の場合、大教室での授業はたいていフォロー・アップがない。筆者も大学生時代、小宮ゼミ(小宮隆太郎教授:当時、教授はアメリカ留学から帰ったばかりの新進気鋭の若手教授)には熱心に出席したが、授業にはあまり出なかった。

 筆者は大学卒業後、アメリカのミシガン大学の大学院に留学している。学費がかなり高かったので、ティーチング・アシスタント(TA=教育助手)として働いて、学費を賄っていた。アメリカの大学の教育はなかなか厳しく、しかも充実したものだった。例えば、授業の後には小グループに分け、教育助手が生徒の質問に答えたりして授業の補足しているのだ。

「落第に同情の余地はない。結果として徴兵されようとも」

 筆者も当時教育助手をしていて、授業の説明や質疑に答えていたが、教授からの指示は厳しく、レベルに達しないと思われる生徒は落第させろというものだった。教育助手をやっていたのはベトナム戦争の時期(1965年11月〜1974年4月)の1966年から1969年だった。落第した生徒は当時、大学生に認められていた徴兵免除を剥奪され、ベトナムに送られてしまう可能性もあった。筆者が落第させた生徒から、このままだとベルナム戦争に送られてしまうとの相談を受けたので、同情して教授に掛け合ったのだが、教授は厳しかった。「同情の余地はない。其れならもっと勉強して落第しないようにすれば良かったのだ」とにべもない返答だった。まさに正論なので、筆者に反論の余地はなかった。大学は勉強する所だ。それを怠って落第したのは同情に値しない。ベトナムには誰かが行かなくてはならないのだから、戦場へ送られるから配慮してくれなどという陳情に耳を傾ける必要はないという事だった。

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筆者

榊原英資

榊原英資(さかきばら・えいすけ) (財)インド経済研究所理事長、エコノミスト

1941年生まれ。東京大学経済学部卒、1965年に大蔵省に入省。ミシガン大学に留学し、経済学博士号取得。1994年に財政金融研究所所長、1995年に国際金融局長を経て1997年に財務官に就任。1999年に大蔵省退官、慶応義塾大学教授、早稲田大学教授を経て、2010年4月から青山学院大学教授。近著に「フレンチ・パラドックス」(文藝春秋社)、「ドル漂流」「龍馬伝説の虚実」(朝日新聞出版) 「世界同時不況がすでに始まっている!」(アスコム)、「『日本脳』改造講座」(祥伝社)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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