農水省は2月4日、2021年の農林水産物・食品の輸出が前年比で25.6%増加し、1兆2385億円となったと公表した。以前から、政府はこれらの輸出を1兆円以上とする目標を掲げていたので、これを達成したことになる。マスメディアの評価も押しなべて好意的である。
国交省より悪質な農水省の統計操作
しかし、その陰で笑いをこらえているのは農水省だろう。農業の専門誌である日本農業新聞を含め、うまく騙し通せたからだ。
昨年末、国交省の統計不正が大きな問題となった。しかしこれは、業者が受注実績を記した調査票を毎月提出することになっているのに、それが遅延していることが、問題の発端だった。このため、国交省の担当者が提出されていない月の数値を推計して計上し(これが不正に該当)、さらにその後当該月の数値を含めた調査票が提出されたのに、それを差し引かずに提出月の数値として計上した(これが二重計上に該当)、というものだった。国交省の統計担当職員の稚拙さやそれを改めようとしなかった省全体の不誠実な対応は、非難されるかもしれないが、不正行為をカバーアップ(隠ぺい)しようという大それた悪意を感じさせるものではない。

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これに対して、農水省は統計自体を改ざんしたのではない。元データは財務省の貿易統計なので、改ざんしようがない。問題は、国民やメディアへの提示方法の欺瞞的な操作である。これにマスメディアは気が付かなかった。これで農水省は、その政策によって、農産物の輸出が順調に増え、農家所得の向上が図られると印象付けることに成功した。国交省の稚拙さと異なり、出てきた数値を操作する作為や悪意を感じる。