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農林水産物・食品輸出の1兆円超えは慶事なのか?

農水省の統計操作に騙され続けるマスメディア

山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

20年も騙され続けたマスメディア

 政府が輸出振興の旗を振り始めたのは、小泉政権の時からである。競争力がないと思われている農産物の輸出を増加するというのは、ニュース性があるうえ同政権の高い政策能力を示すことができる。また、農家所得が向上すると農民票の獲得にもつながる。

 しかし、この当時から私は、農林水産物・食品の輸出額の中に国産農産物はほとんど含まれていないことを指摘してきた。大きなものは、真珠などの水産物や即席めんなど輸入農産物の加工品だったからだ。

 今から6年前の論座の記事「農産物輸出の増加と農業のグローバル化」(2016年3月9日付)から引用しよう。

「各紙が2015年農林水産物・食品の輸出が前年を21%上回る7,452億円となり、3年連続で過去最高を更新したと報じている。(中略)

 7,452億円のうち農産物の輸出は4,432億円である。実は、そのかなりが、アメリカやオーストラリア等から輸入した小麦、砂糖、大豆、とうもろこしなど輸入農産物原料を使った加工品(例えば、即席めん)だということだ。

 農産物というイメージからかけ離れているものも含め、国産農産物または一部にそれを使用していると思われる加工品を上げると、果物193億円(うちリンゴ134億円)、タネ151億円、清酒140億円、牛肉110億円、緑茶101億円、野菜・その加工品98億円、豚の皮90億円、酪農品77億円、植木等76億円、米22億円、焼酎16億円くらいであり、これらを合わせると1,074億円、漏れているものを入れても1,500億円程度だろう。8.4兆円の国内農業生産額や6,6兆円の農産物輸入額から比べると、微々たる額だ。

 日本の輸出が倍増しても、国産農産物の輸出が大きく増えるかどうか分からない。一生懸命アメリカ産農産物を日本で加工して、輸出を増やすだけになるかもしれない(実は牛肉も豚の皮もアメリカ産とうもろこしを原料(飼料)とする加工品だ)。」

 今回も同じだ。次は、農水省の公表数値を円グラフにしたものである。

農林水産物輸出の内訳(202年1)拡大農林水産物輸出の内訳(202年1)

 この中で、国産農産物を使用したと思われるのは、額の多い順に、牛肉537億円、日本酒402億円、緑茶204億円、りんご377億円、米59億円、ぶどう46億円、いちご41億円に過ぎない。

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筆者

山下一仁

山下一仁(やました・かずひと) キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

1955年岡山県笠岡市生まれ。77年東京大学法学部卒業、農林省入省。82年ミシガン大学にて応用経済学修士、行政学修士。2005年東京大学農学博士。農林水産省ガット室長、欧州連合日本政府代表部参事官、農林水産省地域振興課長、農村振興局整備部長、農村振興局次長などを歴任。08年農林水産省退職。同年経済産業研究所上席研究員。10年キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。20年東京大学公共政策大学院客員教授。「いま蘇る柳田國男の農政改革」「フードセキュリティ」「農協の大罪」「農業ビッグバンの経済学」「企業の知恵が農業革新に挑む」「亡国農政の終焉」など著書多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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