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東京一極集中は持続性がない〜石破茂氏が語る地方創生への意思(上)

富国強兵のための制度が引きずる負の遺産

神山典士 ノンフィクション作家

地方はどうあるべきなのか

 かつて政界を動かす軸の一人だった石破茂はいま何を考えどんな行動を起こそうとしているのか?

 昨年の総裁選で出馬せず、その後自らの派閥もグループ化の道を選んだ衆議院議員・石破茂。

 かつては防衛庁長官、防衛大臣、農林水産大臣、党政務調査会長、幹事長などを歴任。30代のころには自民党を飛び出し、政界再編の軸の一人だったこともある。2012年と18年の総裁選では大量の地方票を獲得したが、永田町内での支持者は少なく、ついに安倍内閣の牙城を切り崩せなかったことは記憶に新しい。

 その存在は自民党内でも「異質」だ。党内にあっても忖度せずに首相や閣僚にもの申し、麻生内閣の時には閣内にありながら首相に解散を進言したこともある。

 自他ともに国防族であることを認めているが、その一方で2014年には内閣府特命大臣(初代地方創生大臣)に就任し、全国の自治体を400以上回ってその実態把握を行った。その数は、後継の地方創生相の誰よりも上回っている。

 人口減少高齢化経済衰退と慢性的に疲弊しているうえにコロナ禍で苦しめられる地方の自治体からは、「地方創生のために石破氏の活躍を再び」との声も聞こえてくる。

 おりしもインタビューを行った1月17日、初めての施政方針演説に望んだ岸田文雄首相の口からは、「地方創生」の言葉は一度も発せられなかった。

 地方創生を政治の流行にしてはならない。地方の再生なくしてこの国の再生はない。

 日頃からそう発言する石破に、今後の地方創生のあるべき姿を聞いてみた。

木質バイオマス発電で使う木材の集積地を視察する石破茂地方創生担当相(肩書は当時、2015年6月、岡山県真庭市で)拡大木質バイオマス発電で使う木材の集積地を視察する石破茂地方創生担当相(肩書は当時、2015年6月、岡山県真庭市で)

岸田首相の演説に「地方創生」なし

──岸田内閣は「デジタル田園都市構想」を掲げ、地方にもDX(デジタルトランスフォーメーション)の波を広げようとしています。けれど地方のどんなコンテンツをデジタル化により付加価値をつけようとしているのか?地方の視点で創生を考えているのか?そこには大きな疑問があります。石破さんはその点をどうお考えでしょうか?

石破 さきほど国会から戻ってきたのですが、岸田首相の演説に「地方創生」という言葉自体は入っていませんでした。一方で、デジタル田園都市構想で地方を発展させるんだという点は強調されていましたが、デジタル化して地方の何を発展させていくのか、その点はまだ明らかにはなっていないと思います。

少なくとも中央の政界において、政策としての地方創生はかなり存在感を失いつつあるという懸念を私は持っています。岸田総理の演説で、「東京一極集中の是正」という言葉が出てこなかったことも気になります。

講演でもよく話すことですが、たとえば1970年代の田中角栄先生の「列島改造」、70年代から80年代にかけての大平正芳先生の「田園都市構想」、80年代末期の竹下登先生の「ふるさと創生」等、自民党は時代ごとに地方の発展を常に考えて来ました。そして安倍内閣で「地方創生」を看板政策の一つに掲げました。では、それが過去の内閣の地方政策と何が違うのかと考えると、以前の政策は日本経済が高度成長し、人口も増えていた時代の発想だったわけです。

勿論、それぞれ素晴らしい政策ではあったのですが、これを失敗すると国全体の危機だ、というような切迫感は無かっただろうと思います。地方が発展するといいなぁとは思っていたけれど、出来なかったら本当に国は行き詰まっちゃうよという危機感は無かった。それは人口が増えていて経済が伸びていたからです。

その頃と現在とでは状況が全然違う。いま人口は急減期に入り、経済は30年ほどほぼ横ばいが続いています。

ですから安倍内閣においては、「地方創生」に失敗は許されないという大きな危機感とともにスタートしました。私もそういった思いで、2014年から2年間、初代の大臣を務めました。現在は全国に1718市町村あります。それぞれがどう伸びて行くかは、それぞれの地域でしか解るわけがない。それまでの国の政策は全国一律で、決まったメニューから事業を選んでもらうだけだった。だからうまくいかなかった。そうではなく、それぞれの地域で、自分の地域の強みを発見し、何をしなければいけないかを真剣に考えてください、と地方を行脚しながらお願いしたんです。

「産官学金労言士」といいます。地方創生は役所だけがやるものではない。産業界、役所、大学・高校・中学校、地方銀行・信用金庫、労働組合、ラジオ・テレビや地元の新聞、税理士・弁護士等の士業、等々、地域のあらゆる人たちが一体となって、それぞれ自分のまちをどうするか、自分たちで考えていく。そして国は、こういった自治体のプランに対して予算、情報、人材で支援をする。国が言ったとおりにやって下さいということではありません、と申し上げた。それで知恵を出し、汗を流してくれた市町村がたくさんありました。

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筆者

神山典士

神山典士(こうやまのりお) ノンフィクション作家

1960年埼玉県生まれ、信州大学人文学部卒業。96年『ライオンの夢、コンデ・コマ=前田光世伝』にて小学館ノンフィクション賞優秀賞。2011年『ピアノはともだち、奇跡のピアニスト辻井伸行の秘密』(講談社、青い鳥文庫)が全国読書感想文コンクール課題図書選定。14年「佐村河内事件報道」により、第45回大宅壮一ノンフィクション賞(雑誌部門)雑誌ジャーナリズム大賞受賞。「異文化」「表現者」「アウトロー」をテーマに様々なジャンルの主人公を追い続けている。最新作は『知られざる北斎』(幻冬舎)、『もう恥を書かない文章術』(ポプラ社)『成功する里山ビジネス~ダウンシフトという選択』(角川新書)「社員の幸せを創る経営」(幻冬舎)等

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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