小此木潔(おこのぎ・きよし) ジャーナリスト、元上智大学教授
群馬県生まれ。1975年朝日新聞入社。経済部員、ニューヨーク支局員などを経て、論説委員、編集委員を務めた。2014~22年3月、上智大学教授(政策ジャーナリズム論)。著書に『財政構造改革』『消費税をどうするか』(いずれも岩波新書)、『デフレ論争のABC』(岩波ブックレット)など。監訳書に『危機と決断―バーナンキ回顧録』(角川書店)。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
「プーチン独裁」が招いたルーブル暴落と不況、声あげる市民への期待
国際金融システムからロシアを締め出す新たな経済制裁で、ロシアはウクライナに対する侵略の大きな代償を払う羽目になった。
ロシア通貨ルーブルの暴落や輸入物価の高騰によるインフレと、石油・天然ガス取引停滞からくる不況のダブルパンチ。それによって苦しめられるロシア国民の間で、厭戦・反戦の機運は急速に高まる。それはもはやプーチンの方針転換を引き出す程度ではおさまらず、独裁打倒の現代版ロシア革命となるのではないか。
ルーブル相場の動きや、弾圧にも屈しない反戦デモの広がりから、そんな予感が漂う。
ロシアによるウクライナ侵略をやめさせるため、欧州連合(EU)と米英などは2月26日、強力な経済制裁の措置として、ロシアの主要銀行を「国際銀行間通信協会(SWIFT)」から締め出す措置をとることで合意した。グローバルな金融決済のシステムを利用させないことで、ロシアの経済に最大級の打撃を与える作戦だ。
これによって侵略が直ちに止まることはないにしても、ボディーブローのように効いてくるのは必至だろう。侵略の代償として生じる通貨ルーブルの暴落、深刻化する輸入インフレと不況のもとで、ロシア国民の苦境と不満が反戦平和運動となって噴出するに違いない。そうすれば、プーチン大統領の暴走に歯止めがかるだけでなく、やがて独裁の崩壊とロシア民主化につながってゆくのではないか。
それは、平和とパンを求めたかつてのロシア革命の伝統を現代によみがえらせる道となるのかもしれない。