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経済制裁は「現代版ロシア革命」を導くか

「プーチン独裁」が招いたルーブル暴落と不況、声あげる市民への期待

小此木潔 ジャーナリスト、元上智大学教授

ロシアが支払う大きな代償

 国際金融システムからロシアを締め出す新たな経済制裁で、ロシアはウクライナに対する侵略の大きな代償を払う羽目になった。

 ロシア通貨ルーブルの暴落や輸入物価の高騰によるインフレと、石油・天然ガス取引停滞からくる不況のダブルパンチ。それによって苦しめられるロシア国民の間で、厭戦・反戦の機運は急速に高まる。それはもはやプーチンの方針転換を引き出す程度ではおさまらず、独裁打倒の現代版ロシア革命となるのではないか。

プーチン大統領を非難し、ロシア軍のウクライナへの侵攻に抗議する日本在住のロシア出身者ら=2022年2月26日、東京都新宿区
 ルーブル相場の動きや、弾圧にも屈しない反戦デモの広がりから、そんな予感が漂う。

 ロシアによるウクライナ侵略をやめさせるため、欧州連合(EU)と米英などは2月26日、強力な経済制裁の措置として、ロシアの主要銀行を「国際銀行間通信協会(SWIFT)」から締め出す措置をとることで合意した。グローバルな金融決済のシステムを利用させないことで、ロシアの経済に最大級の打撃を与える作戦だ。

 これによって侵略が直ちに止まることはないにしても、ボディーブローのように効いてくるのは必至だろう。侵略の代償として生じる通貨ルーブルの暴落、深刻化する輸入インフレと不況のもとで、ロシア国民の苦境と不満が反戦平和運動となって噴出するに違いない。そうすれば、プーチン大統領の暴走に歯止めがかるだけでなく、やがて独裁の崩壊とロシア民主化につながってゆくのではないか。

 それは、平和とパンを求めたかつてのロシア革命の伝統を現代によみがえらせる道となるのかもしれない。

SWIFTから締め出し、EUの覚悟

 SWIFTは、国際資金決済のインフラとして機能しているもので、世界の金融機関が出資して1973年につくった非営利法人(本部・ベルギー)だ。事実上、EUの方針に従って運営されている。今回はロシアからの天然ガス輸入を前提に今年度中に脱原発を実現する予定のドイツがこれまでの慎重論を転換し、ウクライナへの武器供与も含めた支援を明確にしたため、これを機にフランスなどとの足並みがそろった。

ロシアへの経済制裁を表明する岸田文雄首相=2022年2月23日、首相公邸
 EUの執行機関である欧州委員会(EC)や、ドル建ての貿易取引・決済に強い影響力を持つ米国、さらには英国、イタリア、カナダとともに金融制裁の強化に関する共同声明を発表した。日本政府もこれに同調すると発表した。

 具体的な影響としては、ロシアの輸出の大黒柱である石油・天然ガスの取引の際の資金決済がかなり困難になる見込みだ。ロシアの銀行の一部はSWIFTから排除されないので、欧州諸国が必要としている天然ガスなどの貿易が完全に止まるということではなさそうだが、それにしても深刻な影響が出るのは避けられない。

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