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ウクライナへのロシアのこだわり

NATOへの恐れと冷戦時代のソ連の影響圏

榊原英資 (財)インド経済研究所理事長、エコノミスト

 去る2月24日、ロシアはウクライナに対する軍事侵攻に踏み切り、ウクライナ軍の80以上の施設を攻撃したと発表した。プーチン大統領は「他に選択肢はなかった」と述べ、軍事侵攻を正当化した。ロシア国防省コナシェンコフ報道官は、あくまでも軍事施設を対象にした攻撃であり、民間人に対する脅威はないと主張した。

 一方、ウクライナ軍参謀本部によると、首都キエフの郊外にある軍事施設が巡航ミサイルの攻撃を受けたほか、ウクライナ軍の東部の拠点になっているクラマトルスクや南部にある軍事施設など各地で攻撃が続いているという。

 ゼレンスキー大統領は24日、国民に向けて演説をし、一連の攻撃でウクライナ人137人が死亡し、316人がけがをしていると明らかにした。また、ウクライナ大統領府の幹部は地元メディアに対し、国内にあるチェルノブイリ原子力発電所が激しい戦闘の末、ロシアの部隊に占領されたとしている。敷地内ある放射性廃棄物の貯蔵施設の状態は不明だと伝わっている。

 更に、ウクライナ東部の親ロシア派幹部は、ウクライナ政府が統括する地域まで侵攻し、2つの州の全域を掌握したいとの考えを示した。ウクライナのゼレンスキー大統領はロシアによる軍事侵攻を強く非難したうえで、ロシアとの国交の断絶を発表したのだ。

ウクライナを「兄弟国」とみるロシア

 30年前まではロシアもウクライナもソビエト連邦という国を構成する15の共和国の1つだった。とりわけ、ロシアと国境を接するウクライナ東部は16世紀からロシアの影響下にあり、ロシア語を話す住民が多く暮らしていて、民族や宗教も同じで、歴史的つながりが深いことから、ロシアは30年前のソビエト崩壊後も、ウクライナを「兄弟国」として、特別な存在だと考えてきたのだ。

侵攻を受ける前のウクライナの首都キエフ MaxxjaNe/shutterstock.com侵攻を受ける前のウクライナの首都キエフ MaxxjaNe/shutterstock.com

 他方、ウクライナ西部はかつてオーストリア、ハンガリー帝国に帰属していたこともあって、宗教もカトリックの影響が残っていて、ロシアからの独立志向が強く、同じ国でも東西は分断されている状況だった。ロシアのプーチン政権はこうした状況を利用し、東部のロシア系住民を通じて、その影響力を及ぼそうとしている。

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