パナマ文書で露見したプーチン氏や習近平氏周辺の権力濫用と蓄財
2022年03月08日
ロシアへの経済制裁は、金融機関からプーチン大統領や側近、「オリガルヒ」と呼ばれる富裕層にまで拡がっている。
1月に1ドル=70~80ルーブルだった為替相場は、直近では123ルーブルまで暴落した(下のグラフ)。16日には外貨建て国債の利払いが控えており、デフォルトの恐れがある。モノ不足は深刻になり物価は高騰し、国民の不満は頂点に達するだろう。
今回の制裁の特異性は、大統領を支える高官や富裕層、その家族を個人的に狙い撃ちする点にある。この国を支配するのはこれら一部の特権階層という認識だ。
「パナマ文書」とは、パナマの法律コンサルティング会社「モサック・フォンセカ」から漏洩した膨大な取引データだ。
これを南ドイツ新聞が入手。国際報道調査ジャーナリスト連合に参加する世界のメディア(日本は朝日新聞が参加)が詳細に分析し、タックス・ヘイブン(租税回避地)に群がる世界の富裕層の実態を初めて明らかにした。
ロシア関連では、キプロスにあるロシアの銀行がロルドゥギン氏らのインナーサークルに無担保・低金利で20億ドルの資金を貸し出した。その金はロシア国内に還流して高金利で貸し出され、差益が彼らのスイスにある口座に送られたという。
ロルドゥギン氏はプーチン氏と同じサンクトペテルブルグの出身。若いころからプーチン氏と飲み歩き、娘の名付け親になるなど特別な関係にある。複数の大手企業の大株主でもある。
オリガルヒとは、旧ソ連が崩壊し、多くの国営企業が民営化された際、当時の企業長や支配人らが経営者に転身したことに始まる。その後、エリツィン大統領の再選に協力して政権との関係を深め、エネルギーや重工業はじめほとんどの産業分野を牛耳り、メディアも握った。
プーチン政権になると、エリツィン時代のオリガルヒは追放され、代わりにプーチン氏のKGB(国家保安委員会)時代の仲間や親族などが起用された。ロルドゥギン氏もそれにつながる人物だ。
「世界一の富豪」とされるプーチン氏の資産内容は謎だが、6年前、その一部(数千億円)が娘カテリーナ氏に引き継がれていると報道されたことがある。
筆者はかつてサンクトペテルブルグを訪れた時、現地ガイドの女性にプーチン評を尋ねた。すると「彼は社会を不平等にした。貧しくても公平だったソ連時代に戻りたい」と怒りを露わにしたことを思い出す。
今回の制裁にはロシア支配層の資産を調べ上げて腐敗ぶりを世界に晒す狙いがある。オリガルヒや、政権内で権力を振るう「シロヴィキ」(治安・軍関係出身者)はかなりの打撃を受けるのではないか。
プーチン氏が「経済制裁は宣戦布告のようなもの」と苛立つのは、身辺が暴かれる危機感の反映でもあるように見える。
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