ウクライナ危機は、ロシア制裁によって「ロシアvs.西側の経済総力戦」の様相を見せている。人々を豊かにする経済は今や敵を破壊する「武器」になった。
米欧日は金融・貿易システムや基軸通貨ドルを駆使した集中攻撃をロシアにしかけ、ロシアは「欧米がロシア産原油の輸入を禁止すれば、原油価格は1バレル=300ドルを超える」と恫喝。双方が「奥の手」で攻めている。

対ロシア制裁の主な項目

ロシアの主な制裁対抗策
プーチン大統領、経済制裁の見通しで誤算か
国力の違いを確認しておこう。米国のGDPはロシアの14倍。EUは中枢国だけで10数倍、日本も3.4倍あり、経済力では30対1ぐらいの比率になる。長期戦になると、この差がモノをいう。
プーチン大統領の誤算は、ウクライナ善戦などの戦闘面だけでなく、経済制裁について確かな見通しを持っていなかった点にもある。
輸出が禁止された半導体・電子部品・コンピュータ・通信機器などは、機械・家電・自動車産業などの底上げに不可欠な製品。ロシアは産業全体が競争力を失うだろう。
国債デフォルトの危機は続き、景気は冷え込む
ロシアは金融も厳しくなる。3月16日のドル建てロシア国債の利払い(1億1700万ドル)はデフォルトを回避したが、国債の元利払いは今後も次々にやってくる。
ロシアには6400億ドルの外貨準備があるが、その47%(3000億ドル)は凍結された。大企業もドル建て債務を抱えており、ブルムバーグの分析では官民合わせて1500億ドルにのぼる。いつデフォルトが起きてもおかしくない。
ロシアの国家予算は38兆円(日本の約3分の1)だ。そこに膨大なウクライナ戦費がのしかかり、税収は制裁で落ち込む。財政は苦しくなり国民にしわ寄せが行く。
モノ不足も始まり、すでに砂糖や塩の購入制限が行われている。食品や生活必需品の物価も上昇中だ。ロシア中銀は物価抑制とルーブル防衛のために金利を9%から一気に20%に上げたが、副作用で景気は急速に冷え込むだろう。

ロシア歴代権力者のマトリョーシカ。左からレーニン、スターリン、ゴルバチョフ、エリツィン、プーチン=筆者写す。プーチンは1952年生まれ。75年にソ連国家保安委員会(KGB)に勤務し、96年エリツィン政権に参加、2000年大統領に初当選
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