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電力需給逼迫警報であらわになった「形ばかりの電力自由化」~変わらぬ9電力依存

再エネと自給自足が広がれば、供給確保も消費者の責任となっていく

北村俊郎 元日本原子力発電理事

初の電力需給逼迫警報

 政府は3月21日夜、東京電力管内の1都8県で翌日に電力需給が非常に厳しくなるとして、「電力需給逼迫警報」を出し、経済産業大臣が記者会見をして、企業や家庭などに節電への協力を求めた。22日には、東北電力管内にも発令した。警報は電力需要に対する供給の余力が3%を下回る見込みとなった際に出される。逼迫した原因は福島県沖で起きた地震の影響で、東北地方南部にある火力発電所が止まっているのに加え、気温が急に下がったことと、悪天候で太陽光発電の出力が低下したためだ。

 東京電力は火力発電をフル稼働したほか、揚水式水力発電所の活用、自家発電設備を持つ製鉄業などへの供給要請、関西電力など他の電力会社からの融通をしたが、それでも足りなかった。

 幸いにして、大幅な節電協力が得られ、天候の回復とともに太陽光発電も復活して事なきを得たが、東北地方の火力発電所の被害は大きく、復旧まで時間がかかると見られ、今後とも電力需給には目が離せない。昨年あたりから何度か供給余力が低くなるケースがあったが、今回はついに警報発令となってしまった。

電力需給の逼迫(ひっ・ぱく)を受け、上半分のライトアップが消された東京タワー=2022年3月22日拡大電力需給の逼迫(ひっ・ぱく)を受け、上半分のライトアップが消された東京タワー=2022年3月22日

電力自由化からの視点を欠いた議論

 こうした一連の出来事について、メディアには、さまざまな意見が出ている。

 ・節電呼びかけに当たって、政府と電力会社は、有効な節電の具体策を、わかりやすく示す必要がある。また、警報発令が前日夜になったので国民に伝わるのが遅れた。もっと早く知らせるべきで、需給状況の見える化も必要だ

 ・昨年も西日本で大雪による危機が起きて、各電力会社に供給力の強化を求めていたが、東京電力は対応が不十分だったのではないか。

 ・太陽光発電など再生可能エネルギーが拡大すると、悪天候時には発電量が急減するが、それを補う火力発電所は老朽化が進んでいるので、政府は火力発電所の改修や新設を促す仕組みを作るべきではないか。

 ・こうした事態に対処できるよう、停止中の原発の再稼働を促進することが必要だ。(一方、原発の稼働は新規制基準への適合や避難計画の整備が前提であり、目先の需給と直結させて議論すべきではないとの意見もある)。

 ・電力各社の需給はここ数年、綱渡りが続いている。今回の事態を招いた構造問題に目を向け、安定供給の回復へ電力制度の総点検が必要だ。

 ・東日本大震災を契機に、東日本と西日本の周波数の違いを乗り越えるための周波数変換機の増強を含め、地域を越えて電力を融通する送電線の強化をしているが、これを急ぐとともに、さらに増強を図るべきだ。

 ・太陽光は曇天や降雪時には発電が期待できない。再生エネを伸ばすためにも、風力や地熱など多様な再生エネの活用と、発電した電気をためる蓄電池の開発など、再生エネの弱点を補う技術革新を進めることが重要だ。

 ・現在は需給逼迫時の供給停止をあらかじめ契約に入れたり、国や電力会社からの要請によって需要抑制してもらっているが、必要に応じ、大口顧客向けの電力供給を削減する電力使用制限令なども検討すべきだ。

 しかし、これらの意見には、需給逼迫を電力自由化の観点から捉える視点が欠けている。

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政府の「電力需給逼迫(ひっぱく)警報」が出たため、都内の家電量販店のテレビ売り場では起動しているテレビを50%にするといった節電に取り組んでいた=2022年3月22日、東京・有楽町拡大政府の「電力需給逼迫(ひっぱく)警報」が出たため、都内の家電量販店のテレビ売り場では起動しているテレビを50%にするといった節電に取り組んでいた=2022年3月22日、東京・有楽町

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筆者

北村俊郎

北村俊郎(きたむら・としろう) 元日本原子力発電理事

1944年、滋賀県生まれ。1967年慶應義塾大学経済学部卒業後、日本原子力発電株式会社に入社。本社のほか東海発電所、敦賀発電所、福井事務所など現場勤務を経験したのち、理事・社長室長、直営化プロジェクトリーダーを歴任。主に労働安全、教育訓練、地域対応、人事管理などに携わり、2005年に退職。福島県富岡町に移り住む。同年から2012年まで社団法人日本原子力産業協会参事。福島第一原発の事故により、現在も避難を続けている。著書に「原発推進者の無念」(平凡社新書)「原子力村中枢部での体験から10年の葛藤で掴んだ事故原因」(かもがわ出版)がある。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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