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悪いインフレに突入、生活と財政を守れるか

給付金? 消費税減税? 参院選に向けて議論を

小此木潔 ジャーナリスト、元上智大学教授

 「値上げの春」である。ロシアによるウクライナ侵攻がエネルギー価格や消費者物価の上昇に拍車をかけている。新型コロナウイルス感染症と物価高のダブルパンチから国民生活を守るためとして、給付金や消費税の減税を含む経済対策の提案・検討が政党から次々と浮上してきた。

 参院選をにらんだ大衆迎合・「ばらまき合戦」の感は否めないにしても、社会的・経済的弱者の支援など必要性はある。有効かつ有意義な政策はどうあるべきか、を考えねばならない。政党とメディアを巻き込む大いなる論戦を望みたい。

インフレを実感、食品も雑貨も軒並み値上がり

Lightspring/shutterstock.com
 近所のスーパーで買い物をするたびに、食料品や日用品の値上がりを実感する。焼きそば、カニかまぼこ、コーヒーからトイレットペーパーまで、値上がりしていないものを探す方が難しいくらいだ。1割以上値上がりしたものも少なくない。政府がインフレーション(物価の全般的な上昇)を正式に認めるのはまだこれからだが、日々の生活実感としては間違いなく我々はインフレの中にいる。

 もともとは世界経済がコロナ禍から立ち直る中でエネルギーや食糧価格の上昇が起きていたところへ、ロシアによるウクライナ侵攻に伴う経済制裁や混乱で世界的なインフレ傾向に拍車がかかっている。その大きな渦に日本が巻き込まれているといっていい。

 日本銀行が2022年4月7日に発表した3月の「生活意識に関するアンケート調査」では、1年前より物価が上がったと回答した人は81・2%に上り、2015年9月の調査以来、6年半ぶりの高水準となった。暮らしについては41・7%の人が「ゆとりがなくなってきた」と答えた。この比率は4月以降、さらに上がるに違いない。

 ロシアの侵攻を一刻も早くやめさせたり、石油輸出国の増産を促したりすることが大切だが、それらはすぐには実現しそうにない。また、かつては日本を含む諸国に強い労働組合が存在し、賃上げ闘争によって生活防衛をある程度果たせた時期もあったが、いまや昔話だ。現実には、それぞれの国が弱者救済・生活防衛の政策対応を迫られている。

自民党は給付案、野党は消費税の減税案

 参議院自民党は、コロナ禍による収入の減少や物価上昇を理由に、子育て世帯を含む困窮世帯に対し、夏休み前に1人10万円を現金給付するよう政府に求める緊急提言をまとめ、8日発表した。参院自民の「不安に寄り添う政治のあり方勉強会」(座長・世耕弘成参院幹事長)が、経済対策を議論する党の「経済成長戦略本部」に提出したもの。できるだけ大規模にしたい考えだという。

原油価格・物価高騰等に関する関係閣僚会議で発言する岸田文雄首相=2022年4月5日、首相官邸
 公的年金の受給者に5000円ずつ配る自民・公明案は、自民党の茂木敏充幹事長らがぶち上げたものの、「選挙向け」「有権者をなめるな」といった批判がネットなどで噴出し、いったん白紙撤回されたが、さまざまな物価高対策との組み合わせで装い新たに復活する可能性もありそうだ。

 公明党は石井啓一幹事長が3月28日に首相官邸で岸田文雄首相と会談し、物価高騰に関して補正予算の編成が必要とする同党の緊急提言を渡した。ウクライナ情勢や新型コロナの第7波の可能性を踏まえ、ガソリンにかかる税金の一部を軽減する「トリガー条項」の凍結解除や地方創生臨時交付金の大幅な拡充、穀物や飼料・肥料、希少資源の高騰対策などを求めた。

 野党からは、昨年の衆院選でコロナ禍対策として掲げた消費税の減税案が物価高からの救済という要素を加えて再び登場してきた。

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