熱源も大規模装置も不要、課題の送電・蓄電技術の開発に注力を
2022年04月29日
先日の関東圏の電力需要の逼迫の際、太陽光発電が天候不順でほとんど発電しなかったこと、その補填のために火力発電所、他の地域からの送電、民間の自家発の支援などを総動員し乗り切ったことが報じられた。そのことに関連して、再生可能エネルギーは火力発電や原子力発電など従来の電源と比べて、不安定で頼りないもの、あてにならないものだという主張も見受けられた。
太陽光発電が増えた結果、晴天が続くと火力発電所は停止したままで稼働率が低下する。悪天候が続けば、最大出力を要求されるので電力会社は古くなった火力発電所を廃止出来ず、経済的なしわ寄せが全部来てしまう。太陽光発電や風力発電を主力電源にすることは、亡国の政策だと断ずる論者もいる。
だが、それは一方的な見方なのではないか。どの電源も長所短所があり、それをうまく組み合わせて使うこと、短所をカバーするためにさまざまな工夫を凝らすことこそが必要なことだ。「わずかな放射線でも健康に害がある、放射性廃棄物の取り扱いは難しい」と言っていたら、原子力発電は実現出来なかっただろう。
完璧な電源などどこにもない。原子力発電所も、ほぼ毎年定期検査があり、2~3ヶ月は発電出来ない。事故やトラブルで突然停止することもある。その間は火力発電にバックアップしてもらっている。特に福島第一原発の事故以降は、再稼働した原子力発電所は数基に留まり、多くの原子力発電所が10年間も役割を果たせずに火力発電のバックアップに依存している。
太陽光発電、風力発電、水力発電所に共通の特長は、熱源を持っていないことだ。火力発電はボイラーで化石燃料を焚いて熱源を作って蒸気を発生させている、原子力発電所はボイラーが原子炉に変わっただけだ。しかし、太陽光発電や風力発電は熱源を持たないので、燃料を供給してやる必要がない。熱源としているのは太陽の光と熱であり、気圧差が出来ることで風が吹く。水が蒸発して雲になり雨になる。それを電力に変換する装置が太陽光発電所、風力発電所、水力発電所である。
学校でも教えているように、太陽で起きていることは核融合であり、太陽は「天空の核融合装置」だとも言える。地上にあればその強烈な光と熱を遮るために強固な防護設備が必要になるが、太陽の場合は1億5千万キロメートルの宇宙空間にあるため、地球上ではその光や熱を安全に利用できる。古代人はこれをなによりの恵みとし、太陽を神と崇めた。
太陽光発電や風力発電が出力が不安定だったり、夜間に発電しないのは「天空の核融合装置」のせいではなく、雲や地球の自転のせいだ。太陽光発電も風力発電も他の電源と違って、その構造が実にシンプルである。太陽光発電所は火力発電所で言えば、熱源であるボイラーはもとより、蒸気発生器とタービン発電機もなく発電をしている。また、風力発電は火力発電のような蒸気タービンを使わずに、風で直接発電機を回している。
現在、再生可能エネルギーの出力不安定な点は、揚水式水力発電、大型蓄電池に電力を貯蔵し、需要の多くなる時間帯に放出して太陽光発電などの不安定さを補っている。また、有り余る電力を他の地域で使えるよう地域間の送電網の強化が進められているが、それはまだ十分ではない。再生可能エネルギーの出力の不安定さをなくすため、世界中でさまざまな研究開発が進行中だが、これから普及が進むEV(電気自動車)のバッテリーに蓄電し、必要に応じて送電系統に送り込む方法は、既に実施可能な解決策のひとつだ。
地球の裏側で発電し、それを海底ケーブルで送電するようにすれば、24時間太陽光発電で電力供給が可能になる。その場合、送電ロスは数パーセントで、揚水式水力発電を使った場合の30パーセントのロスに比べると少ないロスで済む。今、シンガポールがオーストラリアから再生可能エネルギーで生産した電力を海底ケーブルで電力供給を受けようと計画している。地球の裏側から送電することも技術的には十分に可能だろう。
学校でも教えているように、太陽で起きていることは核融合であり、太陽は「天空の核融合装置」だと言える。地上にあればその強烈な光と熱を遮るために強固な防護設備が必要になるが、太陽の場合は1億5千万キロメートルの宇宙空間にあるため、地球上ではその光や熱を安全に利用出来る。古代人はこれをなによりの恵みとし、太陽を神と崇めた。
太陽光発電や風力発電が出力が不安定だったり、夜間に発電できなかったりするのは「天空の核融合装置」のせいではなく、雲や地球の自転のせいだ。今のところ、再生可能エネルギーの出力不安定な点は、揚水式水力発電、大型蓄電池に電力を貯蔵し、需要の多くなる時間帯に放出して太陽光発電などの不安定さを補っている。
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