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金利上昇なら債務超過も 袋小路の日銀がいまだに金融緩和を唱える隠された理由

コタツの温もりから外に出られない日本経済

木代泰之 経済・科学ジャーナリスト

 電気・ガス、ガソリン、小麦、トウモロコシなど、生活にかかわる物価の上昇が止まらない。コロナ禍やウクライナ侵攻に伴う国際商品の供給難に加え、輸入物価を押し上げる円安が進んでいるからだ(下のグラフ)。

円ドル相場拡大

「インフレ下の低賃金」が定着した日本

 3月の消費者物価指数が前年比0.8%上昇したのに対し、企業物価指数は9.5%も上昇した。今は企業が物価上昇の痛みを負担している形だが、いずれ限界がきて消費者物価に転嫁される。

 日本銀行の黒田東彦総裁は「この物価上昇は持続しない」(4月22日の米国講演)と語るが、コロナ禍もウクライナ侵攻も長期化が予想され、物価のすう勢は変わらないだろう。

黒田日銀総裁拡大米国で講演する黒田日銀総裁=4月22日、米ニューヨークのコロンビア大

 一方、今年の春闘は賃上げ率が例年並みの2%強にとどまり、「インフレ下の低賃金」の構図が定着。生活はじりじり苦しくなっている。

 円安の直接的な理由は、米国が長年の金融緩和・低金利政策に終止符を打ち、正常化とインフレ抑制に向けて強力に動き出したことにある。

 米国はゼロ近辺だった政策金利を3月に0.25%上げた。5月には0.5%上げ、年内に3%程度にする見通しだ。金融緩和で膨らんだ保有資産を圧縮する「量的引締め」にも進む。

日銀は「指し値オペ」で低金利を市場に徹底

 一方、日本は9年前にアベノミクスが始まって以来、低金利と金融緩和を今も続けている。このため日米の金利差が拡がり、投資家は低金利の円を売って金利が高いドル資産(米国債など)を買っている。これで円安(ドル高)が進む。

 ところが日銀は円安に歯止めをかけるのではなく、逆に拍車をかけるような対応をしている。

 4月下旬に行った「指し値オペ」がそれである。10年国債を利回り0.25%で無制限に買い入れるという市場操作で、「金利は0.25%以上には上昇させない」と宣言したのに等しい。投資家は安心して一層の円売りに走った。

 黒田総裁や鈴木財務相は「急速な円安は好ましくない」「悪い円安だ」と、円安を口先でけん制しているが、市場では誰も本気にしていない。

発行国債の半分を保有、金利上昇なら巨額の評価損

 日銀や政府が、円安・物価高の原因である金融緩和の是正に動こうとしない理由はなにか――背景にあるのは、日銀の財務内容の異常な悪化である。

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筆者

木代泰之

木代泰之(きしろ・やすゆき) 経済・科学ジャーナリスト

経済・科学ジャーナリスト。東京大学工学部航空学科卒。NECで技術者として勤務の後、朝日新聞社に入社。主に経済記者として財務省、経済産業省、電力・石油、証券業界などを取材。現在は多様な業種の企業人や研究者らと組織する「イノベーション実践研究会」座長として、技術革新、経営刷新、政策展開について研究提言活動を続けている。著書に「自民党税制調査会」、「500兆円の奢り」(共著)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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